Raycraft racing service

2012/1/24

魔性のダイヤモンド SB8RC

この世にはその魅力ゆえに人の心を惹きつけて放さないものがある。

そしてそれは往々にしてその魅力ゆえに人の心を惑わしつつ、一筋縄ではいかない気難しさがあったりもする。

ここにSB8RCというバイクがある。

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BIMOTA

優美さ、こだわり、他とは一線を画すコンセプトはある意味孤高といってもよい存在だ。

ところが、その美しいバイクがときに気難し屋の手に負えない獣と化すことがある。

今回の御題は手負いのSB8RCを優雅な女豹にもどす作戦のおはなし。

 

そのバイクが仙台のフクダテクニカに入庫してきたのは、震災後ようやく落ち着きを取り戻しつつあった2011年6月だった。

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アルミとカーボンのコンビフレーム、フレーム右側に沿うようにホリゾンタルにレイアウトされたリアショック、パズルのように取り回されたエグゾースト、長いホイールベース、ダイナミックなトリコロールのカラーリング、どれも「奇抜」という単純な言葉だけでは言い表しきれないまさに珍獣!

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昆虫チックなフロントカウルがちょっとしたご愛嬌。

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で、この珍獣の入庫の理由は始動性の悪さ。

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エグゾーストはモトコルセ製が装着されていました。 これまでこちらのコラムで紹介したカスタムでも何度か登場していますが、モトコルセのエグゾーストは大変すばらしいパフォーマンスのエグゾーストのひとつであることは間違いありません。 しかし、ノーマルからエグゾーストを変えたときに避けて通れないのが燃調のセッティング変更。

これまで、何人かのオーナーさんと何軒かのショップさんでの苦心の跡がうかがえる状態でした。

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サブコンを取り付けて燃料を調整していたようでしたが、思った通りにはいかなかったようなのです。

そこで、フクダテクニカさんより依頼を頂き、フルコン投入!

2011年発売のマイクロテック製ECU M232Rを装着しました。 ハーネスはノーマルハーネスを一部改造して使用。 ラムダアンプは米製デイトナセンサーズの2チャンネルラムダアンプを使用して燃料のフィードバックコントロールを行いました。

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マイクロテックのM232Rは現在レイクラフトいち押しのハイパフォーマンスECUで、基本的な燃料噴射量調整(ギア段毎)、燃料噴射タイミング、点火時期調整(ギア段毎)を制御できることはもちろんのこと、ラムダアンプを使用しての燃料のフィードバックコントロール、dRPMを使ったトラクションコントロール、ローンチコントロール、シフター機能、ピットロード・リミッター機能、燃料消費量カウントなどなど、ストリートユースからレーシングユースまで幅広くかつ高いパフォーマンスの制御が可能なECUです。

懸案の始動性については、燃料だけでなく点火進角のマップも調整しながら、最善のセットを見つけ出すべく地道にセッティング。 始動性は大幅に改善し、もはや始動に関しての不安は一切払拭されました。

続いて、常用領域のセッティング。

ベースマップの無い車両をセッティングするのは至難の業です。

今回は時間と手間はかかりますが、燃料と点火進角のベースマップをノーマルのECUから解析して取り出す方法を選択しました。 この車両のベースエンジンはSUZUKIのTL1000Rですので、そのベースマップデータがあればそれを流用という手もありますが、今回はそれも無かったので、これまた地道にデータ取りを行います。

毎度毎度思うことですが、ECUのセッティングってホントに地道な仕事の積み重ねです。

 ベースマップが準備できたところで、シャシーローラーに載せて、データをロガーで計測しながら燃料と進角のマップを最適化してゆきます。

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M232Rには、マイクロテックECUの特徴的な機能である「学習機能付きA/Fフィードバックコントロール」という機能が付いていて、これは、設定した空燃比のターゲットに対しマップ値との差分をリアルタイムで燃料補正するものです。

この機能のあるおかげでセッティングの時間は大幅に短縮できますし、この機能は実際の走行時にも大いに活躍してくれます。

 

というわけで、オーナーさんのもとに帰ったSB8RCがその後どうなったかというと、富士のMVアグスタ走行会で走行し、オーナーさんは始動性、走行性共に大満足されたとの報告を受けました。 以前の状態とは比較にならない好調さで実際ストレートもかなり速かったとか・・・

こういう後日談を伺うと本当に良かったなぁと嬉しくなります。

これまで、M232Rは、SUZUKI GSX−R1000,DUCATI DS1000,SUZUKI GSF1250 Bandit, KAWASAKI ZX−10R,DUCATI 749Rなど様々なタイプの車種でその実績を積み重ねてきましたが、今回BIMOTAでもその性能を実証でき、SB8で燃調や乗り味にお悩みをお持ちのユーザーの皆さんにはきっと朗報となるはずです。 そのようなユーザーの方はぜひフクダテクニカさんにご相談ください。

というわけで、気難し屋の珍獣は見事に優雅な女豹に変身を遂げましたとさ。

どーびんと。

 

 

 

 

2011/11/3

レースは楽しく!   Good bye GP125編 山本武宏というライダー

気が付いたら、2ヵ月半もコラムをサボっていました。

#86

 

怒涛の全日本ロードレース後半戦も先週末で最終戦を終え、このレースを持って全日本ロードのGP125というカテゴリーはその歴史に幕を下ろしました。 (現在は”J−GP3”と名称を変えていますがここではあえてこの呼び方を使いたいと思います)

J−GP3のカテゴリーは今後は4サイクル250ccという仕様で続けられますが、2サイクル125ccエンジンの車両は今シーズンを持って終了となりました。  あの臭くてうるさい2スト特有の暖機から開放されるのかと思うと、ほっとするようなちょっと寂しいような、複雑な心境です。

今回はGP125ライダーで、長年にわたり2Dデータロガーのユーザーである山本武宏選手をコラムでご紹介したいと思います。

山本選手と船田メカ 

 

山本選手とレイクラフトの付き合いは大変古く、私たちレイクラフトが2Dのデータロガーの取り扱いを始めてまもなくの1999年シーズンより導入していただきました。

当時はデータロガー自体があまり知られていない時代で、ましてやかなり高価だったこの計測システムをプライベーターが導入するというのは画期的なことでした。  

しかしこれには2つの理由があって、ひとつは山本選手が元WGPライダーで、データロガーの必要性や有効性を早くから見出していたという点、そしてもうひとつは、この時代GP125はまさに群雄割拠といっても言い過ぎではない程どのチームもいろいろな知恵や工夫を凝らしバイクを”速くする事”に情熱を燃やしていた時代でもあったのです。 ですから、この頃からGP125クラスは2Dのデータロガーを採用し始めるチームがどのカテゴリーよりも多く、山本選手はその先駆けであったわけです。

また、山本選手のデータロガーの活用方法は他のユーザーとは一線を画す斬新なものでした。

エンジンや排気管の仕様を変えて、2スト特有のデトネーションと排気ガス温度の関係をチェックするなどというのは、彼にとってはごくごく当たり前のこと。

仕様の異なる2種類のカウルを付け替えて、ストレートの加速やトップスピードの違いを検証したり、ラップタイムを表示するミニダッシュにラップタイムだけでなく、リヤサスのストローク値を表示し、走行中にリアルタイムで確認するなど、走行の結果としてのデータを比較するのではなく、能動的に走りの違いをデータに反映させてセットアップを詰めてゆくという手法でデータロガーを文字通り活用していました。

山本選手は2007年シーズンで一旦引退されたのですが、GP125ラストイヤーの今年、復帰参戦!

山本選手の愛機 

 

2011年6月、今シーズン初となったもてぎの合同テストでピットに行き、久しぶりに見る山本選手のマシンに搭載されていたロガーに思わず発した言葉が 「懐かしい! まだ元気だったんですね・・・レトロな感じがしますね。」 山本さんに「失礼な・・・」とたしなめられましたが、わたしが本当に驚いたなつかしのロガーが、これです。

 初代CANロガー

シートレールの上からの画像  f1018959.JPG

 

最新のロガーと比べるとずいぶんずっしり存在感がありますが、当時としてはトップスペックのロガーで、今や当たり前となった”CAN”ロガーの先駆けの逸品です。

 

ミニダッシュ

 

ミニダッシュは現行仕様と変わりません。 

 

山本選手の数々の戦歴を計測し続けたデータロガー。  

ここで仕事を終えてしまうのはあまりにももったいない。 山本選手にはぜひ今後もこのロガーを引っさげてレースを続けて行っていただきたいと思います。

 

 

 

2011/8/13

8耐レビュー その3 <スターレーン パワーシフトの実力>

 

Suzuka 8HR

今年の8耐では下記のチームでスターレーン社製パワーシフトを採用していただきました。

・ ウッドストック BEET レーシングチーム   Kawasaki ZX−10R       (予選9位/決勝リタイア)

・ TOHO Racing 広島デスモ          Ducati 1098R                     (予選12位/決勝10位)

・ ブルドッカータゴス X 東本昌平 RIDE   Aprilia RSV4                        (予選39位/決勝26位)

・ BOLLIGER TEAM SWITZERLAND  Kawasaki ZX−10R              (予選16位/決勝38位)

 

Starlane Power Shift

 

パワーシフトはシフトレバーを踏んだとき(正チェンジの場合は引き上げたとき)に荷重の変化する箇所に荷重センサーを取り付けることで、センサーが荷重を感知してエンジンを失火させシフトアップをアシストするシステムです。

パワーシフトのセンサーは車両の種類やシフトレバーの形状の違いを問わず取り付けられる非常に汎用性の高い製品です。 この荷重センサーは圧縮と開放の双方向を感知でき、ユニット側でバイディレクショナル(双方向)のモードを設定すれば、チームに逆チェンジと正チェンジのライダーがいる場合でも、設定変更やセンサーの取り付けを変えることなく両方向のシフター機能が可能>となる画期的なシステムです。

 センサー取り付けのいろいろ

 

また、パワーシフトはセンサーの感度や失火時間を任意に設定できるのでライダーの好みに合わせたシフトフィーリングが得られると共に、ミッションにも負担を掛けないシステムです。

 

今回、耐久レースということで、転倒によるセンサーの断線やユニット本体の故障などに備えて本体やセンサーのスペアなどを多数用意していましたが、全くトラブルはなく、その耐久性、信頼性を実証することができました。

 

 

2011/8/12

8耐レビュー その2 <ZX−10RのECUセッティング>

 

Suzuka 8HR

 

前回のコラムでは燃費に焦点を当てた内容で8耐をレビューしましたが、今回はエンジンセッティングの視点からレビューしたいと思います。

エンジンのセットで重要となるのは減速時のエンプレ(エンジンブレーキ)加速時のTC(トラクションコントロール)です。

ZX−10RのキットECUでは、エンプレのコントロールは”アイドル・コントロール・バルブ”を使って制御していますが、ライダーレベルやライディングスタイルにもよりますがバイパス・エアだけではエンプレ・コントロールには容量的にも不十分でなおかつレスポンスも良くない傾向にあります。

  

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マイクロテックのECU M232Rではエンプレ・コントロールはサブスロットル開閉に連動しカムでメインスロットル全閉開度をコントロールして減速時の吸入空気量を調整するシステムを採用しています。これにより、アイドル・コントロール・バルブのネガな部分が解消され、ライダーの要求に合ったエンプレの調整が可能になります。

ここで不思議なのは実際サブスロットルシャフト同軸に取り付けられているエンブレコントロール用であろうカムはSTD車両でも純正KITでも何にも使用する設定がないことです。ではこのカムは誰が使用しているのでしょう。多分SBK関係のチームが使っているのでしょうか。しかしながらこのカムは非常に優れた設計がなされておりレイクラフトの計測ではサブスロットル全開時のメンスロットルのプッシュアップ量は12%以上設定することが可能となる優秀なものです。SBKの圧縮比はJSBなどと比較して大幅に高いことを考えると「このエンブレコントロール用のカムはSBK用のハイカムなのかもしれない。」といったことを想像するのも楽しいものです。

実際のエンプレのセッティングですが、これはライダーにより減速の乗り方が異なるためエンブレの”効き”に対する要求が異なり、またタイヤのスペックや車体のセットによって減速時の状況が変化するとエンブレの要求も変わってくるため、3人のライダーに共通で適用できるエンプレのセットを見つけるのは容易ではありませんでした。

ZX−10Rのサブスロットルは、スズキのGSX−R1000と同様にステップモーターによりメインスロットルとは独立して開度を設定することが可能となっていますが、実際はサブスロットルの動きはエンブレコントロールと密接な関係にあるため完全に独立した開度設定は出来ません。ここで問題になるのは耐久レースの場合に一般的に燃費向上手法として用いられる減速時の燃料カット/減量のスロットル開度条件とエンブレコントロールとしてのスロットル開度の折り合いです。簡単に言えば燃料カット/減量条件を8000rpm以上/メインスロットル開度2%以下と設定してもエンブレコントロールの設定条件では8000rpm以上でメインスロットルの開度が2%以下にならない場合もありS字区間などは減速時の燃料カット/減量で大きく燃費を稼げる区間と分かりつつも燃費とドラビリの両立が非常に難しいセットを要求されます。

言い換えると、サブスロットルの動きは全閉付近のメインスロットルの動きと常に連動しているのでエンプレ制御を他のスロットル開度をトリガーとする制御が混在する場合は中庸セッティングしなければならずもどかしくなることがありますが、ここでメインスロットルがいつも全閉になるバイパスエアタイプのエンブレコントロールに戻しては本末転倒になってしまうのでエンブレの制御方法を変更することはしませんでした。実際M232RにもHONDA−CBRやDUCATI−1098Rで実際使用するバイパスエアタイプのエンブレコントロールを設定したので各ギアでエンジン回転数ごとにステップ数を設定することも可能でしたが・・・・・・・

現実的には言ってしまえば理想のスロットルシステムはDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)です。人間が直接コントロールするアクセル開度とスロットル開度コントロールが独立してECUで制御できるようになるとセッティングの許容は飛躍的に拡大するはずです。

 YAMAHA-R1やBMW-S1000RRやAPRILIA-RSV4などは以上のような要件が満たされているので今後ますますスプリントレース化の傾向が強まる鈴鹿8耐ではチームの考え方次第ではHONDAの連覇を阻止するような可能性があるのではないでしょうか。しかしながらHONDAが強いのはこの様な2次的な技術である電子制御などとは全く関係ないエンジン本体思想や車体設計がすぐれているのではないだろうかと思うのも事実です。

DBWは今や4輪ではごく普通のテクノロジーです。ぜひ2輪でもDBWが一般的になってくれることをメーカーのエンジニアの方にお願いしたいと思います。 現状2輪で量産車にDBWが採用されているのは数社だけというのが実情でその中でもレースベース車両になりえる車種は上記の3機種に限られているのではないでしょうか。

実際どこの制御屋さんも基本設計に優れたエンジンと車体を切望しています。なぜならエンジンおよび車体の基本設計が優れていれば制御屋さんの仕事はプラスから始まりますが、そうでなければマイナスからのスタートとなります。このマイナスからゼロまでの仕事が結構大変なのです。

 

 

次にTCですが、この制御はトップカテゴリ(MOTOGP/WSBなど)は別にして比較的新しい制御項目であるためまだ良く理解されていない部分も多く、TCをアクセルをラフに開けても勝手にちょうど良く加速してくれる機能だと誤解している方も多いのではないでしょうか。

また、最近はDucatiやAprilia、MVアグスタなどの輸入車の中には標準でTCが付いている車種もあり、ストリートのライダーの皆さんには雨天走行時や一般道で濡れたマンホールの上を通るときなどのスリップを回避できると好評のようです。がしかし、こういったストリートユースのTCと、レーシングに要求されるTCはまったく別のセッティングが必要です。

レーシングに要求されるTCは、加速時の急激なグリップアウトを防ぐためのものと、コーナー立ち上がり時などのリアタイヤの過度なスリップを軽減し加速をアシストすることです。ですからライダーがはっきり認識できてしまうようなTCでは効き過ぎで、そのようなTCはむしろ加速を阻害することになりかねません。ましてやストレートで効いてしまうTCなどは論外です。

事前テストでは、出口、芹沢の両ライダーがメインカーで車体のセットを進める中、武石選手がTカーを使ってメインカーとは別のアプローチで車体のセッティングを試す傍ら、エンジンのセッティングを積極的に担いました。

武石選手は、あえて様々な乗り方でわざとTCが作動するような状況を作り出しTCがどのように効くのかを確認したり、実走でどのレベルのTCが最適かを検証するなど、TCのセッティングに相当な時間を割いてテストしてもらいました。その結果としてこのTCのセッティングに関しては実戦でもかなり有効なレベルに達したのではないかと思っています。

事前テストで大雨の日があったのですが、TCがコーナーの立ち上がりなどで適切に作動し、特にセクター4(130Rからシケイン、最終コーナー)で何度もベストタイムの赤表示が点灯したのはTCの効果があったものと思います。また、テスト、レースウィークを通してハイサイドの転倒がなかったのはこのTCの効果も一役かっているのではないかと考えています。

 しかし制御過多になってしまうと、特にTCに関しては注意が必要な気がします。基本は「この制御でラップタイムが早くなったか遅くなったか」を冷静に考えなくてはならないということです。こう考えるとレイクラフト的には有効なTCの構築はまだまだ先になりそうですが全日本の後半戦でいろいろ試してみたいと思います。

 

 

2011/8/6

8耐レビュー その1 <芹沢の28周>

 

Suzuka 8HR 

 

8耐、終わりました。

レイクラフトがサポートあるいは部品を供給させて頂いたチームについて、レイクラフト的切り口でレビューしてゆきたいと思います。

なお、写真を撮る時間が全くなかったため画像がありません。悪しからずご了承ください。

<追記>

宮城県仙台市から8耐を観戦に行かれた知人の方から貴重な写真を提供して頂きましたので掲載させていただきます。ありがとうございます。

 

緊張のスタート直前

 

EVAレーシング・トリックスターのレースは、まさに地獄の底からのスタートになりました。 サイティングラップでマシンにトラブルが発生し、とっさの判断で急遽Tカーに乗り換え!

しかしこのタイミングでのトラブル発生はむしろラッキーだったのかもしれません。スタートした後ではTカーへのチェンジはできません。運があったのだと思います。 昨年のPLOTチームの8耐コラムでも取り上げましたが、プライベートチームでTカーがメインカーと同等に機能する状態になっているということは本当にすばらしいことです。

 

確かに決勝に備えてメインカーにすべて良いほうの部品を投入していたことは事実です。しかし、いざという場合に備えていつでも出動可能な状態でTカーを準備していたことも事実です。わたしたちも当然ECUにはメインカー、Tカー同一のマップファイルを注入済み。データロガーも8時間計測できる準備をしていました。

芹沢の怒涛の追い上げ 

 

ピットスタートからの怒涛の追い上げで、ルーティンのピットイン時点ですでに12番手まで浮上した芹沢選手の走りは本当にすばらしかった。

そして、その走りと同じくらいすばらしかったのは芹沢選手の燃費の良さでした。

芹沢選手はその熱血的なキャラから、いかにも豪快な走りでアクセルも極力深い開度をキープしているんじゃないかというイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないかと思いますが、実はそうではないのです。

芹沢選手の走りのポイントはその繊細なアクセルワークにあると思います。加速の初期はタイヤの駆動を確かめながらスムーズに回転を上げ加速してゆく。また、減速ではアクセルを極力あおらず、エンジン回転が下がってゆくのを待ちながらシフトダウンする。要するに、加速減速に必要最低限のエンジン回転回数しか使わないようにするということです。このような走りは耐久レースの走り方としては理想的です。芹沢選手がこれを常に意識しているのか、耐久の走りとしてすでに身についているのかはわかりませんが、このアクセルワークは特筆すべき点です。

昔の話になりますが、2001年から2004年までKENZで参戦していた北川圭一選手もそのアクセルワークはすばらしく、特にS字の無駄のないアクセルワークは芸術的でした。

話しはレースに戻って、レースの燃費の想定は1タンク27周。(タンク容量は24リッター規定) このガイドラインに沿って絞り過ぎないぎりぎりの燃料消費量を目指す燃調を設定していました。 本当は燃費に余裕を持たせようとすればもっと大胆な燃料カットなども可能なのですが、ライダーの望むドライバビリティを確保しながら燃費も成り立たせようとするとどうしても燃料を絞ることは難しくなる。さらに、テストの日程が限られていて、燃費マップをテストする時間がほとんどなかったことから、ECUからの燃料消費量データを元に想定消費量を割り出すしかない状況でした。

レイクラフトのコラムを熟読されている方ならよくご存知かと思いますが、マイクロテックのECUは燃料消費量をCANでデータストリームしてくれるので、これを2Dのデータロガーで計測すると、1周ごとの燃費はもちろん、1周の中の任意の区間の消費量も確認できるのです。

あと10cc、あと5cc、といった具合で、走りに影響の出ないであろう部分をピンポイントで燃料を削る地道でテクニックのいるマップの作り込みが続きました。 しかし、最大のブラックボックスは出口選手の燃費。 彼の燃費マップでの走行データがほとんどない!

そして案の定レースが始まってみると、出口選手の燃費が想定より悪いことが判明。1タンクで27周が難しくなりました。そうなるとどこか別のところで周回数を増やさなくてはならない。

”芹沢で28周できないか?”

事前テストで、トップ3強(TSR,ヨシムラ、HARC)はすでに28周を達成したことが情報として入ってきていましたが、このチームの想定ラップタイムでは28周は必要ないし、現実的に無理と思っていました。

ここにきてこんな難しい課題が浮上するとは・・・

第1スティントと第4スティントの燃費から芹沢選手の燃費が想定より良いことを確認したうえで、6スティント目で28周走行を決断。 サインボードでL2が提示されてからの時間がこれほど長く感じられたことはありませんでした。

給油後の計測ではなんと消費量は22.6リッター! もう1周いけたかというほどの好燃費。 しかもこのスティントではゼッケン25番の鈴鹿レーシングと抜きつ抜かれつの熾烈なバトルを繰り広げていたにもかかわらずです。1タンク29周の可能性を感じさせる結果となりました。 

恐るべし!芹沢太麻樹。

レース後、車検場のEVA初号機 

 

この28周でその後のスティントの周回数負担が軽減しチームは快走。 EVAレーシング・トリックスターはトータル211周で総合5位の結果を収めました。

 

この後もレビューは続きます。 お楽しみに!

2011/7/26

最近のレイクラフト

ちょっとご無沙汰しておりました。

というのも、このところレースやテスト続きでほとんど旅回り状態だったので、コラムのアップが滞っておりました。

前回のコラムで紹介したBanditの鈴鹿FUN&RUNのレースの時も直前まで全日本のもてぎテストで、その後、速攻鈴鹿に行き、またまたとんぼ返りで今度は全日本のもてぎレースが7月の1週目の週末。 1日おいて、7月5日から鈴鹿入りし、今度は6日、7日と鈴鹿8耐の公開テスト、そしてその翌週の12、13、15日は、またまた鈴鹿合同テストで、ようやく厚木に戻ってきました。

今シーズンの全日本ロードレースのメインのサポートチームはこちら。

 EVA_Deguchi

”エヴァRT初号機トリックスターFRTR”です。 

全日本の初戦となった5月の鈴鹿2&4では、初号機の出口修選手に加え、弐号機で芹沢太麻樹選手も参戦したので2台体制! 結果は、新型ZX−10Rで、事実上のワークスであるチームグリーンの柳川選手を凌いで、初号機の出口選手が7位、弐号機の芹沢選手が6位という幸先の良い成績を修めることができました。

詳しいレースレポートなどはこちら↓のチームサイトをご覧下さい。   http://www.trickstar-racing.com/

 

さらに鈴鹿8耐は ↓ のメンバーで参戦。 かなり濃い〜メンツです。

 eva_riders.jpg        

というわけで、耐久に向けたテストは結構大変でした。

バイク2台にライダー3名が次々に乗り換えてテスト、ロガーのデータを管理するだけでも大仕事。正直脳ミソ溶けました。ホント。おまけに暑かったしね・・・

そして、このオヤジライダーたち、コメントが厳しいーっ !!!

ライダー三人三様に、エンブレのフィーリングやTCの効き具合に細かな要求が続き、エンジンセッティングも大仕事。

でもやっぱりオヤジライダー恐るべし。 感覚の鋭さ、限られた時間の中でのセッティングの詰め方、さすがです。勉強になります。

決戦はいよいよ今週末。

TSR,ヨシムラ、HARC の鉄壁のワークス系チームに、プライベートチームがどこまで食い下がれるか! チャレンジです。

 

 

 

 

 

 

2011/6/28

レースは楽しく!   Bandit編

答えはSuzuki Bandit 1250でした。 

何の答えかって?それはこちらのコラムを読み続けていただいている読者の方ならおわかりのはず。6月11日アップの”クイズです”のコラムの答えです。

今回は、ネイキッドにこだわり、Suzuki Bandit 1250でレースを続けておられる兵庫県神戸市の tops LIFE 今村和典さんをご紹介します。

 

いけてるオヤジ今村和典

 

今村さんは、10代の頃からレースが好きで好きで、20代前半までどっぷりレースに人生を捧げ(表現ちょっと大げさ?)鈴鹿選手権に参戦する選手権ライダーでした。  

今、ゼッケンにしている”41”は、当時鈴鹿選手権でチャンピオンを獲った時の栄光のナンバー!  ハガノリ(芳賀紀之選手ーWSBで現在アプリリアで参戦中)や、宇井(宇井陽一選手−元GPライダー、現在全日本ロードレースに参戦中)よりも「オレが先!」とはご本人談。

その後一旦はレースから遠ざかったものの、友人の誘いもあり2004年頃から再びサーキットへ。 GSX−Rなどを駆り、主にサンデーレースに参戦。  大ケガにも遭いながらもやっぱりレースはやめられない。

現在のBandit1250に行き着いたのは・・・

Cool!Bandit1250

 

みんなが乗ってないクルマで速かったらエエねん!

GSFは車体がエエねん!

世界最速の水冷Banditをめざすのがエエねん!

というわけなのです。

しかし、いかんせんベースがプロダクションのネイキッドバイク。  ストレートでST600に離されてしまうのが悔しい!!!

そこで、マイクロテックのM232R 投入!  シフタースイッチはスターレーンのパワーシフト。

M232R

燃料を調整してパワーベストにセット、進角を調整して開けやすくて速いバイクに仕上げてゆきます。

レイクラフトでは、ECUのセッティングに2DのCANロガーを使用しています。  GPSも内蔵されているので、ライン取りも確認でき、

早いセットと速いセットを両立。

主任技師、セッティング注入中

そして、決戦は日曜日、鈴鹿FUN&RUN

ライダーも愛機も勝負服に着替えていざ出陣。

 予選へ

緊張の中、エンジンは小気味良く一発始動。

緊迫の始動

 

予選に向けてピットアウト

ピットアウト

 

予選は、NK−1クラスではトップ。  総合でも6番手の好感触。 スーパーバイク系ドゥカティやKTMなど並み居る競合との混走でこのポジションはなかなかのもの。

決勝を待つ愛機 Bandit

決勝を待つ愛機

 

昭和のライダー。 ポンダはここ ↓

やっぱりトランスポンダはここでしょう。

 

決勝はスタートも決まり、2コーナーで4番手までポジションアップ。  西コースで6番手まで下がったものの、格上のドゥカティ1198Sと熾烈なバトル。  結果は、クラス優勝。 総合でも4位の好成績をおさめました。  拍手!!!

しかし、ファイター今村はこの結果にもまだまだ納得は行っていない様子。

レース後車検場で

頭の中にはすでに次の作戦が・・・

・・・秘密です。

  

戦いすんで、ようやく今村スマイルが戻りました。

レースは楽しく

今回フルコンを投入して、今まで注目していなかったいろいろなことに発見があり、Banditのさらなる進化がますます楽しみになってきました。

こういう、オトナのレースの楽しみを満喫している方、日本でももっともっと増えていってほしいですね。

レースは楽しく!

 

追記: ところで、以前こちらのコラムの「レースは楽しく! GSX−R編」でご紹介した、テイクアップ 田村武士さんは、見事、6月19日開催の岡山ロードレースシリーズ、マイスター/JSB1000/ST1000クラスで優勝! 自己ベストを更新といううれしいおまけ付きでした。  

レースは楽しく!  レースは最高! 

 

2011/6/18

奇跡の748SP <その2>

(more…)

奇跡の748SP <その1>

今日ここでこの車両のカスタムの話をご紹介できることは、本当に奇跡としか言いようのないとても稀有な出来事です。

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はじめにこちらの車両のオーナー様からお問い合わせを頂いたのは2009年の11月のことでした。

Ducati748SPを所有されていて、それまでEPロムの変更等で調整してこられたそうですが、どうにも納得がいかずコンピューターそのものを交換検討中ですというお問い合わせでした。

その後、何度かメールでやり取りさせていただき、マイクロテックのECUを導入していただけることになりました。

2010年3月には、手始めにラムダセンサーを取り付けて頂くようにセンサーをお送りしたり、実車をレイクラフトのワークショップまで送っていただく準備をしていただいたりと、少しずつではありましたがカスタムの段取りを進めていました。

実は、オーナー様は沖縄の方で、748SPは2010年の5月にはるばる沖縄から海を渡り厚木に到着しました。(ちょっと大げさ???)

しかし、5月といえば、すでにレースシーズンに突入しており全日本ロードレースのサポートで転戦する私たちとしては、じっくり時間を掛けて丹念にカスタムを進めたいと思っていた748SPには、ちょっと待っていてもらうしかありませんでした。

2010年のシーズンも終わった11月から、いよいよ本格的に748SPに取り掛かりました。

スタンダードのECUからベースマップを取り、ハーネスを製作し、専用のマップを作成しあとは実車への取り付けです。

2011年1月末から2月にかけて、今回もいつものように仙台のフクダテクニカさんへ車両を持ち込み、ECUのステイ製作やスピードセンサーの取り付け、シフター用の専用シフトレバーの取り付けなど、ECUを導入するのに必要な様々な作業をお願いしました。 そしてもちろんシャシー台上でのECUのセットアップについてもいつものようにご協力頂きました。

考えてみると、これまではテスタストレッタのエンジンセットは何台かやってきましたが、デスモクワトロは今回がはじめて。

Ducatiの往年の名機デスモクワトロもECUを最新のものにすることで、また新たな息吹を吹き込むことができるとすればデスモクワトロユーザーの皆さんには朗報となるはず。  チャレンジングな気持ちが湧いてきます。

マイクロテックのECUには、ノーマルのECUを置き換えるだけのいわゆる”プラグイン”のタイプが各種ありますが、さすがにデスモクワトロ系のECUのプラグインはありません。

こちらが、748SPのノーマルECUである 16M。

 ecu-16m.jpg

 

で、今回の手法は、ノーマルハーネスのECUコネクタに合うようにアダプタを製作し、そのアダプタにマイクロテックのM180という汎用ECUを取り付けました。

そのアダプタがこちら。  ですので、ノーマルのハーネスは一切、切った貼ったしていません。(すごーい!)

 アダプタ

 

これが、今回フクダテクニカさんで製作していただいた、ECUとラムダアンプを取り付けるステイ。 ん〜COOL!!!

ステイ

黒いほうがECU本体で、ステイのプレートに半分沈み込むような感じでとてもきれいな収まりです。 液晶のディスプレイの付いた黄色いほうがマイクロテックの2チャンネルラムダアンプ。  ツインのエンジンはやっぱりラムダは2系統採りたいです。

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こちらは、デジテックの”FALCON”ダッシュ。 以前はワールドスーパーバイクでDucatiワークスも使用していた逸品です。

FALCON  

 

CAN入力だから配線もシンプルですっきり。ダッシュのステイはオーナー作のカーボン製。

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そして、こちらはリヤのスピードセンサー。  車速表示用途だけでなく、車速によるラム圧補正、ギアの認識など今やスピードを正確に計測することは大前提の必須項目です。

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最後に、こちらは以前コラムでもご紹介したシフター用のスイッチ付きシフトレバー。 レーサーシフト(レバーを踏んでシフトアップ)専用ですが、作動は確実です。

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次は、いよいよシャシー台に載せてセットアップ。 準備してきたベースマップを元に何度かセット替えをしながらセッティング。

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山、谷のないスムーズなパワーカーブで、なかなかの出力となりました。 始動性も文句なしです。

後は納車を待つばかり。

2011/6/13

2D BigDashユーザーに朗報です!

2D BigDashユーザーの皆様。 大変お待たせいたしました。

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BigDashディスプレイ用の保護カバーが完成いたしました。

素材はポリカーボネイト製で、大事な液晶画面を悲しいクラッシュからしっかり守ってくれること請け合いです。

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ポリカ製でありながら、透明度が非常に高く、ディスプレイの視認性をまったく妨げません。

装着するとこんな感じです。

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また、2DのBigDashディスプレイが標準で装備されている”BMW HP2”ユーザーの方にも是非オススメ致します。

取り付けはとっても簡単。 ディスプレイに絶妙にはまるサイズになっているので、被せてから側面を何箇所かテープで止めればOK.

販売価格は¥9,800 (税込¥10,290)。

お求め、お問い合わせは下記メールアドレスか、お電話で。

mail@raycraft.jp

TEL: 046−225−6284

 

 

 

2011/6/11

クイズです!  さてこの車両は何でしょう???

ご好評を頂いているマイクロテックの新型ECU M232R。

今回はこちらの車両に搭載です。

 

画像がちょっと手ブレ 

 

昨日は、こちらの車両のライダーでありオーナーでもある方のワークショップに、兵庫県の有馬温泉までお伺いしてECUの取り付け、ハーネスの取り回し、エンジン始動までの作業を行いました。

これまで、レイクラフトでは国内外問わず様々なメーカーの色々な車両に汎用ECUを導入させていただいてきましたが、この車種は今回が初めてです。  ECU本体とシフターユニットの絶妙な収まりに一同感嘆。

ECUとシフターユニットの絶妙な収まり

 

そして今日は鈴鹿フルコースでシェイクダウン!

このステッカーでわかるかも・・・ 

 

4本のスポーツ走行でECUの作動確認からベースマップの確認、今後のセットアップのための検討項目の洗い出し、シフターのセットアップと盛りだくさんのテスト項目を消化しました。

ちなみに、ライダーは自己ベストを1秒近く更新と、ちょっぴりうれしい結果も。

さて、ここまでの内容と画像でこの車両が何かわかりましたか?

わかったあなたはかなりの事情通!? ライダーが誰かもわかればさらにボーナスポイントですね。

来週もテストを予定しているので詳細はまた追ってご紹介させていただきます。

乞うご期待!!!

 

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