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ネコラム2017年3月14日

DBW化プロジェクト第2弾 Ducati749R 火入れ!

どうでしょう!このスムーズでリニア感のあるバタフライの動き!

シフトペダルの動きと絶妙にリンクするブリッピング!

そもそもなぜDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)にするのか?

その答えはここにあるのです。

 

どうしてわざわざお金も時間も掛けてそんな面倒な電装系を組み込むのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますので、ここで簡単にDBWの仕組みとDBW化のメリットをご説明をさせて頂きます...と思いましたが、以前そのあたりの詳しくわかりやすい説明を別のコラムで解説しておりますので、知りたい方はぜひこちら↓のコラムをご覧ください。

Ducati MH900e DBWプロジェクト! 始動 <前振り>

今回の749RのDBWプロジェクトでは、スロットルボディはオリジナルを使用し、2つのボディの結合プレートの部分にDBWのモーターが内蔵されたユニットを組み込みました。

このユニットの中央部分に遊星ギアを用いたリダクションギアを介したモーターの軸があり、この軸につながったリンクプレートとロッドで双方のスロットルバルブを連動させる仕組みです。

それがこちらの画像です。

IMG00732

 

DBW_1

冒頭の動画では伝わりづらいですが実際にはこのDBWのスロットルバルブの動きは驚くほどスムーズで繊細。

かつて、バレンティーノ・ロッシがYAMAHAのM1に初めて試乗したときの最初のコメントが、”Sweet!”だったらしいですが、このDBWもまさに”Sweet!”そのものです。

最近は輸入・国産問わずDBWの量産車が増えてきましたが、量産車に搭載されているDBW制御のスロットルバルブの動きとは違う繊細さがあります。この違いは一般的な量産型DBWギアボックス+大慣性モーターと遊星ギア式ギアボックス+小慣性モーターの違いではないでしょうか?

このスムースなスロットルの動きはライダーの要求に対応できるエンジンブレーキコントロールの実現を予感させます。

Ducatiのカスタムの匠!フクダテクニカさんといろいろ打合せしながら作業を進めてゆきます。

DBW_2

車体にスロットルボディがきれいに収まりました。

IMG00746

IMG00755

ECUはマイクロテックのM232R, DBWのドライバーは同じくマイクロテックのM282。この2つのモジュールはCANで通信しています。

今回は亀の親子の様に二段重ねに。M232RのほうはFW(ファームウェア)およびSW(ソフトウエア)のプログラマーの名前にちなんで、Luca(ルカ)と呼び、M282は最近生まれたLucaの息子の名前にちなんでPietro(ピエトロ)と勝手に呼んでいます。

IMG00753

DBWの初期設定をインプットしていざ火入れ!

エンジン掛かりました~(^_-)-☆

でも、まだまだ細部のセッティングを詰めていかなければなりませんが、今回はここまで。

次回<完結編>(だといいのですが…)をお楽しみに。

 

 

ネコラム2017年3月11日

DBW化プロジェクト第2弾 Ducati749R 始動!

DBW_1

皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか?

6年前、津波にのまれて潮水に浸かってしまい、もはや絶望かと思われていたDucati749Rの復活のお話。

(その詳しいお話はこちら↓)

749Rの復活

今回はその復活した749RがさらにDBWに進化するプロジェクトのお話です。

あれから6年経ち、ちょうどその日を挟んだこの時期に、仙台でまたこのバイクの仕事をさせて頂けるのは本当に運命的なものを感じます。

そして、RaycraftのDBW化プロジェクトは前回のDucati MH900eに続いて第2弾となります。

(第1弾の詳しいお話はこちら↓)

Ducati MH900e DBWプロジェクト! 始動 <前振り>

今回のDBWプロジェクトの展開はどうなってゆくのか!?
乞うご期待です。

とりあえず今日のところは前振りで...

ネコラム2016年10月23日

2016もてぎGP moto2ワイルドカード参戦サポートを振り返って。

フェイスブックページでも速報で今年のもてぎGPへのmoto2ワイルドカード参戦サポートの様子をお伝えしましたが、こちらのコラムではレイクラフト目線での参戦サポートを振り返っての雑感をお伝えしたいと思います。

まず、moto2ワイルドカード参戦の概要ですが、今シーズン全日本ロードレース選手権のJ-GP2クラスにTeamKAGAYAMAから参戦している浦本修充選手は第8戦の岡山大会終了時点で、ランキング2位の関口太郎選手に22.7ポイント差で現在ポイントリーダーとなっています。

ただ、浦本選手がJ-GP2で使用している車両はスズキ車で、ホンダエンジンを搭載することがレギュレーションで規定されているmoto2クラスに参戦することは難しく、これまでもホンダ車以外を使用しているライダーのワイルドカード参戦には壁がありました。そこで、チーム監督の加賀山就臣氏がメーカーやチームの枠を超えてJ-GP2クラスの他チーム等に支援・賛同を呼びかけ、車両もKALEX車を準備し「Japan-GP2」というチームでJ-GP2クラスを代表する形で参戦が実現したものです。

moto2_kagayama

参戦の経緯やレースの詳細はいろいろなサイトやメディアでレポートされているので、さらに詳しい情報はそちらでご覧頂くとして、ここからはレイクラフト目線のmoto2ワイルドカード参戦サポートのレポートを進めたいと思います。

1.車両

今回TeamKAGAYAMAを母体とするチームJapan-GP2が準備した車両はmoto2で圧倒的なシェアを誇るKALEXというコンストラクタの車両です。この車両にmoto2で規定されているホンダ製エンジンを搭載してレースすることになります。

moto2のレギュレーションでは、エンジンがホンダ製ワンメイク、データロガーの使用も2D製に限られ、ワイルドカード参戦のチームにはレースウィークの木曜日朝に主催者からエンジンやECU,データロガー、トランスポンダが供給されるという仕組みになっています。ですから、ワイルドカード参戦チームは文字通りぶっつけ本番の勝負になります。

幸いなことに、チームJapan-GP2で用意したKALEX車両は、以前にmoto2やスペイン選手権に参戦していた車両で、moto2のレギュレーション通りの仕様であったため、私たちレイクラフトで請け負う電装系の部分についてはECUはもとより、データロガーやハーネス、付属の電装部品もほとんど揃っている状態でしたので大変助かりましたし、事前に行った2回のテスト走行時にほとんどの電装系部品の作動確認を行うことが出来ました。これは「段取り八分」のレースの電気屋の仕事的には大変アドバンテージのある事でした。
唯一の懸念点は初めて使用するmoto2専用のトランスポンダ X2を間違いなく取付・作動できるかどうかという点でしたがこれも支給されたレースウィークの木曜日にIRTA*1の担当者から詳しく説明を聞くこともできたので問題なくクリアできました。

moto2_transpondar

2.レースの運営
私たちレイクラフトのGP関係サポートは、1999年のもてぎGPでのGP125クラスワイルドカード参戦の中村実選手(決勝10位)、2003年の鈴鹿GPでのMotoGPクラス参戦のKawasaki柳川選手に続き3回目となりますが、13年ぶりのGPは当時に比べ格段の変化がありました。(当たり前ですが・・・)
まず、ワイルドカード参戦チームの待遇は、様々なレギュレーションの縛りは確かに厳しいですが、レース環境的にはかなり改善され、チームのテントも雨風を凌ぐはいうに及ばず大変素晴らしいピット環境となり、フリープラクティスからレース当日の朝のフリープラクティスまではそのテントにピットイン・ピットアウトする仕組みになっていました。もう、どこかのチームのピットの前を借りて走行するようなことはなくなっていたのです。

moto2_pit

また、moto2クラスはエンジンが主催者から供給されるというシステムの関係もあると思いますが、毎セッション終了ごとに、ロガーデータをIRTAの担当者に提出する仕組みになっていて、エンジンの使用回転域の状況やそれにまつわるシフターの設定などについてアドバイスを受けることもありました。
また、使用するガソリンもオイルもすべて支給されます。要は出力にかかわる部分は徹底してイコールコンディションになるように管理・運営されているということです。とてもシステマティックでスマートです。

3.総括
様々なレギュレーションによりワイルドカード参戦のチームにとってはハードルが高くなってきているのは事実ですが、そのレギュレーションを遵守し、管理・運営出来ているMotoGPという大きな意味での興行組織の運営は大変素晴らしいと思います。
それぞれのチームに携わる人たちは「仕事」として関わっており、またこの興行の運営にかかわる人たちも「仕事」として働いており、商業的に十分成り立つビジネスモデルとして成立しているということです。
そして、それはMotoGPという興行に対する運営資金を調達できているからこそのものだと思います。

日曜日にレースが終わった後、恐らく月曜日にはチームの車両やその他諸々の荷物も迅速に運搬され、もてぎのあとその週の水曜日にはオーストラリアのフィリップ・アイランドに到着しているのです。恐るべしロジスティクスです。プロフェッショナルな仕事です。

MotoGPと日本のロードレースの現状を比較してどうこう言うのは早計ですが、いろいろな面で学ぶところは大変多いと思いますしこのような機会にトップクラスのレースを経験することで、現状を再確認出来れば得るものは大きいと思います。

*1 IRTA : The International Road Racing Teams Association: MotoGPに参戦するチーム、サプライヤー、スポンサーを統括する組織

ネコラム2016年5月5日

Ducati MH900e DBWプロジェクト!<完結編>

大変長らくお待たせいたしました。

あのプロジェクトはどうなったの?とのお問い合わせが有ったか無かったかは別にして、
「安心してください! ちゃんとやってます!(笑)」

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以前こちらのコラムで前振りさせて頂きました、Ducati MH900e DBWプロジェクトがいきなり途中経過をすっ飛ばしてついに完結編へとたどり着きました。
ふと気づいたら前振りしたのがなんと1年前のGW真っ只中。そして完成のご報告がまたもGW真っ只中となりました。

決して丸々1年間掛かった訳ではなく、フクダテクニカさん、レイクラフトそれぞれの作業を少しづつ進めながら冬の間2回ほど仙台にお邪魔して確認の作業とテストを行い、ついに完璧な仕上がりとなりました。

今回のDucati MH900e DBWプロジェクトの概要は、前振り編で簡単にご説明してありますので、ここでは具体的なDBW化の詳しい内容をご説明させていただきたいと思います。

まず、最初に取り掛かったのが、スロットルボディの選定です。

2気筒独立して作動する電子スロットルはドゥカティにもあるにはありますが、いかんせんお値段が高いのです。
そこで、他メーカーの部品をいろいろ探してみたところ、ありました!
アプリリアのシバー750ccのスロットルボディ! これなら価格も手ごろでDBWには性能的にも電装サイドとしては好都合です。

難しいのは、これをどうMH900eのシリンダーに添わせるかです。

MH900eのエンジンにシバーのスロットルボディを、それも狭いトラスフレームの中にきれいに収められるのか???
難易度の高い移植手術となります。
こんなことができるのは名医フクダテクニカさんならではの術式でお願いしないと無理でしょう。

アクセルのグリップ・ポジション・センサーはドゥカティのパニガーレ系部品を使用。

そんなこんなで、ようやく火入れまでたどり着きました。

使用するECUはマイクロテックのM232R プラス M282 DBWモジュールです。
DBWの制御自体はECU本体のM232Rで行い、CAN通信でつながるM282はDBWのアクチュエータ・ドライバとして仕事します。

ベースマップはドゥカティの900ccのものを流用しましたが、細かく燃料をセットするため台上へ。
スロットル開度ごとの燃焼データを計測しフィードバック機能も活用しながら燃料を調整してゆきベースマップを整備してゆきます。
いつもながら結構地道な作業です。

でも、DBWの大きなメリットがここで大活躍です。
通常、ケーブルでつながっているスロットルだとライダーが各開度ごとにモニターを見ながらアクセルグリップをキープしてデータ取りをしなければならないのですが、DBWならECU側で開度を設定し、ライダーはスロットルを全開にしておけば指定の開度でスロットルがキープされるのでぶれることなく正確な開度毎のデータが計測できるというわけです。

ベースマップの整備は順調に進むと思われていましたが、途中ちょっとしたハプニングが...

ある特定の回転域でエンジンがくしゃみをするのです。まあ、その辺にあった900ccエンジンのマップを流用していますし、ハイパーなカムも投入されているということで、在りもののマップではご機嫌斜めさんになる部分もあったのでしょう。

いろいろデータを調べてゆき、インジェクション・タイミングを変えることでこの風邪の症状が改善されました。
こういう微調整がピンポイントでできるのもマイクロテックのメリットですね。

それから、DBWでユーザーにとって身近なうれしいことがひとつ。

それは、クラッチを切らず、アクセルも戻さずにシフトダウンが出来る「ブリッピング」の機能が使えるようになるのです。

これは朗報です。

ぜひ動画でその様子をご覧ください。
(この車両はストリートシフトなので、蹴り上げがシフトアップ、蹴り下しがシフトダウンです。)

こうして、難航すると思われたMH900eのDBWプロジェクトは、ちょっと時間が掛かりお客様をお待たせしてはしまいましたが無事にミッション・コンプリートとなりました。

”MH900e” なのに ”DBW” カッコイイです。間違いなく。

そして、よ~く車両の画像を見て頂ければわかると思いますが、

”MH900e” なのに ”計測関係もフル装備” シビレます。間違いなく。

☆☆☆

ネコラム2015年8月19日

2015 鈴鹿8耐レビュー その4<Team KAGAYAMAの戦い~決戦は日曜日編>

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準備は整いましたと言った先からいろいろな不安が頭をよぎります。

TOP10トライアルで驚異的な2分6秒0をたたき出したヤマハの#21は、いったいどんな想定タイムでどんな作戦に出てくるのか?

前年の覇者#634 ハルクプロはストーナーを擁してどんな戦いを展開するのか?

8耐の勇#12 ヨシムラはきっと万全の体制で臨んでくるに違いないのではないか?

外人ライダー3人組で圧倒的なフィジカルを生かし#778のTSRもきっと上位を狙ってくるだろう・・・

天候はどうだろうか? 雨は降るのか?
とりあえず天気予報は熱中症の注意報が出るほどの快晴で、路面温度もおそらくピーク時には60℃を軽く超えてしまうでしょう。

心配は尽きませんが決勝の時間は刻一刻と迫ってきます。

朝のフリー走行では3人ともレースを想定した走りでタイムと燃費のバランスは完璧です。

スタートライダーは清成選手が担当します。

ここで私たちの心配事は、エンジンがちゃんと掛かるかどうか・・・ 始動性は本当に難しいセッティングです。

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カウントダウンのあといよいよスタート!
ホールショットはなんと清成!
思わず小さくガッツポーズしてしまいました。

振り返ると、2014年のSUGOのセミ耐久、2014年の鈴鹿8耐、2015年のSUGOのセミ耐久、そしてこの2015年の鈴鹿8耐と、ルマン式スタートだけでいえば、TeamKAGAYAMAは毎回ホールショットを取っています。 ライダーのスタートが上手なのはもちろんのことですが、始動性が悪くないことの証明にはなっていると思うので担当のレイクラフトとしてはちょっと自慢です。

事実、ポールポジションの#21 Yamaha Factory Racing の中須賀選手はエンジンがかからず20秒ほどロスしてしまいました。
ファクトリーでも始動性は難しいのです。

1スティント目の清成選手は、初めの数周は2分11秒台、その後ペースをつかんでからは2分10秒台で着実にラップを重ねます。15周目あたりからバックマーカーが出てくるためアベレージのラップタイムは若干落ちますが、ペースは安定してポジションを7⇒6⇒5と上げてきます。

ここで少し気になったのが、トップグループのラップタイムです。上位の#12ヨシムラ、#634 ハルクプロ、#778 TSR、#21 YAMAHAは初めの10周程度は2分9秒台ですが、その後は2分10秒台になることも多く、予想よりはアベレージタイムが速くありません。
作戦なのか、思いのほか高くなった路面温度のために、ブリヂストンタイヤとはいってもペースが上げにくいのか・・・

25周目には#12 ヨシムラと#634 ハルクプロが早くもピットイン、続いて26周目に#778 TSR、#87 チームグリーンがピットイン、Team KAGAYAMAもピットインのサインを出していましたが、清成は頭を横に振り走行を続けます。27周目になってもまだピットインする気配がありません。

28周目ついに#21のYAMAHAがピットイン。 しかし清成はまだ走り続け、Team KAGAYAMAのピット内もざわつきます。
燃料は大丈夫なのか? ピットクルーも今か今かと待機が続きます。

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そして29周目にようやくピットイン。 上位の中では一番周回を多く走りました。このやや無謀とも思える彼の判断があとあと大きなアドバンテージとなってくることはこの時にはまだ予想できませんでした。

そして2スティント目は加賀山選手が走ります。清成選手から加賀山選手に交代する時点ではポジションは1位でしたが、ピット作業を終えてコースに戻った時点ではポジションは6位です。そしてその2周後、ヘアピン手前でのストーナー選手の驚愕のクラッシュが起こります。
このクラッシュでセィフティーカー(SC)が入り#17 Team KAGAYAMAはSCの2ndグループに入ることになります。上位チームは1stグループですからここで否応なく半周分の差がついてしまいます。セィフティーカー解除の後1台パスして4位にポジションを上げますがこの時点でトップグループと1分以上の差がついてしまいました。

さらにその数周後、加賀山選手はシケインで痛恨の転倒を喫してしまいます。逃げ足の速さに定評のある加賀山選手ですが、車両のダメージを最小限に抑えようとして自分の体を車体と路面の間に挟みながらマシンをかばっていたという後日談を聴いたときにはちょっと泣けましたがここで20数秒ロスしてしまいます。

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ところが、ここでまた別のクラッシュがあり、2回目のSCが入ります。シケインでの転倒で一時ポジションを7位に落としましたがこのSC解除後にポジションを6位に戻すことが出来ました。 しかし、トップとの1分以上の差はまだ依然として残っていました。

ここからが加賀山選手の本領発揮です。
SCの数周後から#12 ヨシムラ、#778 TSR、#21 YAMAHAなどが次々に2回目のピットインとなりましたが、加賀山選手はダッシュメーターの残り周回数の表示や警告ランプ、ガス欠症状に気を付けながらピットサインに頭を横に振り続け、ポジションを4位まで上げて、なんと予定周回数をはるかに上回る31周を走り切ってピットインしました。

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このあたりから私たち作戦チームは6回ピットの可能性を探るべくシミュレーションを始めました。

上位チームのアベレージタイムが想定より遅いことと、SCがこの時点ですでに2回も入っていて残りの走行時間と周回数を考えると、この後の各チームのアベレージタイムとSCの入り具合によっては6回の可能性が高まってきます。

続く3スティント目は芳賀選手が着実に周回を重ね、4位のポジションをキープ。途中SCが6周入ったので周回数も1周多く走行してもらい4スティント目の清成選手につなぎます。

1スティント目で燃費が想定よりさらに良かった清成選手にはここで6回ピットの可能性も想定して周回数を予定より数周多く走行してもらう作戦に変えました。このスティントあたりでは気温も路面温度もピークに近い状況となり、周回数の多い走行はライダーには大変つらいものとなりますが、心を鬼にして作戦決行です。 ここでの周回数の貯金があとあと大きなアドバンテージとなることは耐久のセオリーです。

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そしてこのスティントでは3周のSCが2回も入り、さらにその2回目のSCの解除直後にトップを走行していた#12 ヨシムラがピットイン。このタイミングで車体の破損を修復するのですがこれに思いのほか時間がかかりこの間に#17 Team KAGAYAMAはポジションを3位に上げます。

続く加賀山選手、清成選手は3位をキープしたままそれぞれ予定の周回数を着実にこなします。次の芳賀選手への交代が6回目のピットインで予定ではこれが最後のピットインとなります。午後6時31分に最後のライダー交代を無事に終えて芳賀選手が最後のスティントを走行します。

芳賀選手は実は夜目が利くのです。SBKではナイトセッションのレースはないのでそのことを知る人は少ないと思いますし、私たちも知らなかったのですが、レースウィークのナイトプラクティスでも、一番周回数を重ねていたのは芳賀選手でした。このスティントを自分が走ることになるのを予想していたのでしょうか?

あとは前後を走行するチームがあともう1回ピットインするのかしないのか、それまでのピットタイミングから推定して自分たちのチームのポジションが確実にキープできるかどうかを見極めます。

2位を走行する#778 TSRとは1周以上の差がついているのでこのスティントで追いつくのは難しい状況です。4位を走行する#30のSERTと5位の#94 GMT YAMAHAは最後残り数周のところでもう1回ピットインする必要があると見たので追いついてくる可能性はほぼゼロです。

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そしてついにチェッカー! トップから1周遅れの203周を走り切り見事3年連続3位表彰台を獲得しました。
2014年もそうでしたが嬉しいよりはほっとした気持ちと、悔しい気持ちが入りまじり複雑な心境でした。

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完全なドライの状況でダンロップタイヤで3位を獲得できたことは本当に素晴らしい結果だと思います。
また、SCが6回も入ったとはいえ、6回ピット作戦も達成できました。

耐久レースが好きで、燃費管理やピット作戦を自分のライフワークと思っている私としては、これまで何度もプランを立てては達成できなかった6回ピット作戦が思わぬところで達成できて満足なのも事実ですが、終わってみるとああこんなものなのかという気もするし、初めから気合を入れて「6回ピットやるぞー!」という感じでなく、途中から状況の変化に応じて作戦変更した結果が6回ピット成功につながったというのは何とも不思議な感覚です。

そして、この6回ピット作戦が成功した裏には、ライダーの劇的なライディングスタイルの変更や、ピットクルーの正確で確実なピット作業、それら全体をオーガナイズするチーム監督、副監督の采配、タンクやポンプ等のしっかりした管理、燃料給油担当の正確な計量と給油、私たちレイクラフトと一緒に作戦チームで活躍してくれた、かつてレイクラフトで仕事をしていて今はSuzuki MotoGPチームでエンジンマネージメントを担当しているシマフクロウ君、そしてレイクラフト主任技師の地道な燃料マップの作りこみがあってこそのものだと思います。

ただ、このコラムの視点はあくまでレイクラフト目線であり、チームが3位を勝ち取るに至るプロセスにはここに書いた内容をはるかに上回る、多くのスタッフの皆さんのそれぞれの担当分野での活躍があっての結果であり、その詳しい内容については、ぜひTeam KAGAYAMAのウェブサイトでじっくり感動を味わっていただければと思います。

http://team-kagayama.com/news/20150727-1/