Raycraft racing service

2013年2月12日

M270R‐GP3のインプレあれこれ

マイクロテックのECU M270R‐GP3がMFJの公認部品に正式に公認されたことは、当ウェブサイトのNewsページやProductsページでお知らせしていますが、もうご覧頂きましたでしょうか? まだの方は是非ご一読ください。

M270R-GP3

M270R-GP3?それって何?という方のためにここで簡単にご説明を。

全日本ロードレース選手権では2012年シーズンより従来の2サイクル125ccのGP125クラスに代わり、4サイクル250ccのJ-GP3というカテゴリーが始まりました。

このカテゴリはFIMの管轄で行われているmotoGPの中のmoto3クラスに準じたカテゴリですが、レギュレーションは微妙に異なります。 moto3クラスではECUはDellorto(デロルト)製のコントロールECU(ワンメイク化)となっていますが、全日本ではMFJの公認を受けたECUのみ使用が認められる形になっています。

ECUのコントロール化については賛否両論で、ECU製品を取り扱っている私たちレイクラフトとしては一家言あるところですが、それはまた別の機会にまわすとして、

このECUの公認部品化に伴い2012年シーズンはM232GP3というマイクロテックのECUで公認を受け昨年後半から数チームで採用していただきました。

そのあたりの詳細はこちらのコラムをご覧下さい。↓

http://www.raycraft.jp/column/?p=379

そして、2013年シーズン、M232GP3の進化系として、ホンダNSF250Rにプラグインで取り付けできるM270R-GP3をリリースすることになったというわけです。

このECUなら、ハーネスの加工も不要で、ノーマルECUをはずして、そのカプラにそのまま取り付けできます。

簡単なはずの説明がずいぶん長々となってしまいましたが、いよいよここから本題に入ります。

M270R-GP3はすでに数チームでシェイクダウンを行いインプレは上々のようです。

NSF250RのノーマルECUと比べて”どこがどう違うのか”とても気になるところです。

走行後、ライダーの皆さんから伺ったインプレの中で多かったのは、

1.「レブリミットのあたり方が唐突でなくスムーズ」

2.「シフトアップ直後のエンジン回転の復帰が早くてスムーズ」

3.「エンジンブレーキのコントロールをライダーのフィーリングに合わせられる」 といったコメントでした。

まず、1.「レブリミットのあたり方が唐突でなくスムーズ」 という点は車体に不要な挙動が出にくく、最小限のロスで次の加速に移れるというメリットがあります、またエンジンにもやさしいという点も見逃せません。 唐突で失速間のあるリミッターの効き方をするノーマルに比べるとかなりのアドバンテージです。

次に、2.「シフトアップ直後のエンジン回転の復帰が早くてスムーズ」 についてですが、シフトアップ時は、シフターを使う使わないにかかわらず、エンジン回転の下降は避けて通れませんが、その後のエンジン回転の復帰が早くてスムーズという点は走りに大いにプラスになるポイントです。

さらに、3.「エンジンブレーキのコントロールをライダーのフィーリングに合わせられる」 という点については、エンブレの好みはライダーによって様々なので絶対的な一般式としてのエンブレというよりはむしろライダーの要求に合ったエンプレをセッティングすることが出来るメリットは大きいと思います。

これまで何度も言っていることですが、ECUは馬力を出せる魔法の箱では決してありません。

しかし、そのECUの「ストラトジー」と呼ばれる制御能力やセッティングの許容能力によって、エンジンの特性を最大限に生かすことの出来る使い方に導いてくれる、別の意味での”魔法の箱”になりうる物です。

ベースの車両がほぼ同一、ベースのエンジンも基本的にほぼ同じという条件の下で、いかに他者にアドバンテージをつけるかという命題に答えてくれるひとつのソリューション、それがECUです。

Newsページ http://www.raycraft.jp/news/news_index.html

Productsページ http://www.raycraft.jp/products/products_index.html#topics

2013年1月13日

もっと簡単に M270R-GP3

レイクラフトではM270R-GP3(ECU)をMFJ公認部品として公認を受けました。(2013 1/25 より使用可能) 一般的にはM232-GP3のような汎用ECUはハーネスを新規で製作するためECU自体のコネクタはあまり大きな問題にはなりません。また実際NSF250Rのハーネスはものすごく重量があります。ここで新規作製のハーネスにある程度の金額をかければ重量は1/2~1/3に軽減することは十分可能です。

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しかしながら汎用ECUが一般化していない日本ではハーネスを新規に製作することが汎用ECUに交換する際の大きなハードルになっているという事実があります。また現状ではいかに低コストでレースを行うかが大きなテーマになっていることも事実です。そこでレイクラフトではNSF250RのプラグインECUバージョンのM270R-GP3を設定しましたのでここで詳しく説明してみたいと思います。

特徴はまずSTD ECUと交換するだけの手軽さという点です。しかしながらここで注意していただきたいのはこのECUはMarelliやMOTECと同じフルコンであるということです。このフルコンの難しさを少しでも払拭するためにレイクラフトではM232-GP3と同様に発送時にNSF250RのベースマップをECUにプリセットするサービスも行う予定です。

このECUの特徴は基本的なセッティングから高度なセッティングまで直感的に分かり易い画面で行える点が挙げられます。またひとつひとつの機能がレースに使用することを前提に考えられています。例えばギアシフトに関してもオートシフターの失火時間とシフトドラムの回転角が関連付られており単純なタイムベース制御ではなくクローズドループ制御が可能であり自動的にオートシフターの失火時間が決定されます。当然ながらこの制御を行う場合はセレクタ式のギアポジションセンサーではなくポテンショメーター式のギアポジションセンサーが必要となります。この機能はファクトリーレベルでは当然行われている制御ではありますが一般的なレーシングECUでは珍しい機能です。同様にエンジンブレーキコントロールに関してもバイパスエア量を単純にエンジン回転数とスロットル開度のみで決定する機能に加え、エンジン回転数/スロットル開度/ギアとスキッド(減速時に発生するリアタイヤのハーフロック)レベルを考慮したバイパスエア量のコントロールをすることも可能です。この機能も一般的なレーシングECUにはない機能です。

最後にレイクラフト的にはマイクロテックの最大の特徴と位置づけをしている学習機能付きA/Fフィードバック制御についての有効性について解説してみたいと思います。マイクロテックの学習機能付きA/Fフィードバック制御は非常に短時間でターゲットA/Fにするための燃料セットを自動的に行うことが出来ます。例えばサーキットで同じ場所を同じようなエンジン回転数、スロットル開度で毎回通過する場合、普通のA/Fフィードバック制御では毎回同じ様に補正係数が決定されます。この場合もしベースマップがターゲットA/Fに対してかなりリッチな燃料セットでターゲットA/F=12.8に対して毎回A/F=12.2までしか調整出来ないとした場合、これを解決するにはA/Fフィードバック制御のセッティング変更かベースマップ調整が必要となります。しかしマイクロテックの学習機能付きA/Fフィードバック制御は走行時の最終補正値を記憶しているため、もう一度同じ場所を同じような条件で通過すれば前回通過時に補正された値をベースに追加補正されるため補正回数を重ねるたびに実A/FとターゲットA/Fが近づきかつ一回一回の補正値が小さくなり最終的には制御範囲全域をターゲットA/Fでトレースすることが可能となります。またこの状態までくれば、学習機能付きA/Fフィードバック制御をキャンセルして最終学習値だけで走行しても同じような結果を得ることが可能となります。また吸排気系の変更等で今までの学習値が使用できなくなった場合はオンライン状態で学習値リセットボタンをクリックすればまた一から学習値を保存する事が可能となります。このオートマッピングこそ走行時間が少なく人手が足りないプライベートチームには絶対必要な機能であると考えます。

今回説明した内容はM270R-GP3の特徴の一部分ですがレースをする上で大きな可能性をもつレーシングECUであることを理解していただけたのではないでしょうか。また次のコラムではM270R-GP3のもう一つの特徴であるCANによるデータストリームを利用したデータロギングの方法を解説したいと思っております。

2012年12月6日

M232-GP3と全日本最終戦

今年レイクラフトではMicrotecのM232-GP3をMFJの公認ECUとしての認可申請を行い許可されました。

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このM232-GP3は全日本最終戦で山本剛大選手と山田誓己選手が使用しました。結果はご存知のようにレースは大雨でキャンセルとなり予選までの走行となりました。

しかしながらM232-GP3使用のユーザーが予選とはいえ、ECUセッティングに多くの工数をかけられない状況で、山本剛大選手が4位 山田誓己選手がポールポジションという結果は大変有意義な結果であると考えます。

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ここではM232-GP3のレースで使用する場合、他のECUとは違う具体的なメリットについて説明することにします。

例えば吸排気系を大きく変更した場合を考えるとまずは燃料セットを最適化するところから始まります。このような場合M232-GP3は学習機能つきA/FフィードバックコントロールというファンクションをONにすれば実際の走行時のA/Fをエンジン回転数やスロットル開度ごとに設定したターゲットA/Fに非常に短時間で正確に合わせる事が超簡単です。このファンクションはMarelliやMotecの上級モデルと比較しても全く遜色がありません。

例えば吸排気系を大きく変更した場合、この機能をONにした状態でサーキットをレーシングスピードで3周ほどすればほとんどの場合実A/FがターゲットA/Fの±0.15程度の範囲に収まります。実際はスロットル開度15~20%以上をA/Fフィードバックゾーンに指定しておいてスロットル全閉~15%程度までの領域はスロットル開けはじめのキャブレーションやエンジンブレーキ特性のセットを各ユーザーが行う領域でありラップタイムにも大きく影響する領域でもあります。逆に言えばスロットル開度20%以上の通常の燃料セットに時間を費やすほどレースウイークはひまではないのです。

またM232-GP3の学習機能つきA/Fフィードバック機能は最終の補正値をECU内部にメモリーしているためA/F計測システムを外してもECU内部にメモリーされた最終補正値を使用してバーチャルA/Fフィードバックで運転することが可能です。またこの学習機能つきA/Fフィードバックを行うために必要なA/F計測システムは特別専用品ではなくCAN出力付きまたはアナログ出力付きのA/F計測システムであれば基本的には可能です。

ここで前出したエンジンブレーキに関してM232-GP3はどのようなことが出来るか説明します。M232-GP3はNSF250RのスロットルボディについているStepper Motor タイプのバイパスエアバルブを直接コントロールすることでエンジンブレーキコントロールを行っており、この方式はNSF250R STD ECUと同じです。

しかしながらSTD ECUと異なるところはM232-GP3はエンジンブレーキのコントロールセットをギア段毎に設定出来ることとエンジンブレーキの強弱を細かく設定できることが大きな違いです。NSF250Rのエンジンブレーキコントロールセットは6000rpm以下の調節と8000rpm以上の調節のみ行うことが可能で、多くのユーザーは8000rpm~13000rpm程度の領域にセッティングの葛藤があるのではないでしょうか。具体的には8000rpmでエンンブレーキをより強くしたセットにすると13000rpm前後のダウンシフト時の使用領域では素早いギアチェンジでリアタイヤが大きくロックする傾向になります。またこの逆で13000rpm前後のダウンシフト時の使用領域に合うようにエンジンブレーキをセットすると8000rpm付近のターンイン時のエンジン回転数領域でエンジンブレーキが弱く逆に車体を押してしまい旋回させずらい状況のになる傾向が強くなるのではないでしょうか。この点M232-GP3はエンジン回転数ブレークポイントが32箇所設定することが可能なのでよりきめ細かなエンジンブレーキの設定が可能です。

次にGP3カテゴリーにはあまりなじみが少ないトラクションコントロールに関してGP3カテゴリーでも大いに有効であるという話しをしたいと思います。まずここで断っておかなければならないのはレース用トラクションコントロールとはストリートバイクのトラクションコントロールとは異なり基本的にトルクリダクションをライダーに明らかに認識されるようなシステムではありません。実際、一昔前の失火を多用していたトラクションコントロールは少数派となりDBWによる吸気量コントロールやA/Fコントロール、IG/Tコントロールによるトルクリダクションが多くみうけられるようになてきています。ここからはレイクラフトの私的な思想を多分に含んだ話でですが時間つぶしに考えてみて下さい。

まずGP3カテゴリーのロガーデータを見て思うことはコーナー立ち上がり時のバンクアングルとスロットル開度の関係です。バンクアングルの最大値はどのカテゴリーも同じようなものですがGP3の場合JSB / GP2 / ST600 では考えられない深いバンクアングル時からスロットルが100%になっている点です。この事実は何を言っているかと言えば、もし車体全体のトラクションが破綻した場合、ライダーがスロットルを少し戻した位では駆動力はほとんど減少しないということです。現実的にも全日本GP3/WGP MOTO3カテゴリーのトップクラスのライダーたちの立ち上がり時ハイサイドは非常にハイスピードであり、多くの場合ライダーが対処出来ないぐらい素早い現象です。

これらの現象の原因の一旦にハイグリップタイヤと大口径スロットルボアが考えられます。しかしながらこれらアイテムをリストリクトしてしまうのはあまりにも後ろ向きでありレース自体の醍醐味までリストリクトしてしまう可能性をはらんでおり規制することには反対です。本来であればDBWシステムがこの問題の多くを解決するのではありますが現実的にはDBWは使用できません。

ここで視点を変えて急激なグリップアウトをトラクションコントロールで緩和できないかという発想です。ここで問題となるのはGP3の場合、スロットル開度からはバンクアングルを予想しずらい点です。しかしながら現在は非常に安価ではあるが高性能なイナーシャルプラットフォームを入手することが可能となってきています。このようなイナーシャルプラットフォームを用いたコントロールはレース界ではMOTOGPやSBKだけのものでした。しかし今では誰でもが買えるようになって来ました。当然のことながらM232-GP3にイナーシャルプラットフォームを組み合わせてトラクションコントロールの有効活用することも可能です。またM232-GP3に標準装備されているトラクションコントロールはリアタイヤがスピンする時のエンジン回転数の上昇する速さを感知して出力制御するタイプのトラクションコントロールです。またこのタイプのトラクションコントロールは使用に際して非常に維持管理が楽なタイプです。

なぜならばスリップ感知タイプのトラクションコントロールは走行中に前後どちらかまたは両方の車速計測系に不具合があればそこでトラクションコントロールはキャンセルされてしまいます。この点M232-GP3に標準装備されているトラクションコントロールはエンジン回転数の上昇率をECU自体が常に把握しており、外付けのセンサーは不要なため故障は皆無です。また制御の内容も点火アドバンス・リタードおよび燃料のリーン・リッチ・カットの組み合わせで少しのトルクリダクションから大きなトルクリダクションまで設定することが可能であり実際のトルクリダクションまでの反応時間も十分高速です。また走行中にライダーによるトラクションコントロールのレベル変更も可能でありプライベートユーザーには非常に現実的で有効に使用できるトラクションコントロールではないでしょうか。

いずれにせよMicrotecのM232-GP3はこれからレース用ECUでいろいろなことをしたいと考えているチームやライダーには最適な商品です。取り扱いも非常に簡単でありかつ本格的なレース用ファンクションの一杯つまったECUです。

このECUは将来のWGPライダーを目指すライダーだけではなく将来WGP・SBKでエレクトロニクスプロスタッフやプロメカニックを目指している若者にも使ってほしいECUです。またM232ーGP3を使い込んでいく過程でいろいろなことをインスパイアされてほしい。もちろん野望をもつお父さんメカニックもウエルカムであることはいうまでもありません。

2011年4月18日

M232R New Software (モタード編)

dscf0003.JPG

M232Rのソフトウエアがアップデートされました。それに伴い以下の

エンジンにもM232Rは対応することが可能になりました。

Aprilia RXV450/550 SXV450/550   KTM RC8 RC8R

HONDA CRF250/450 & RC45/NR  YAMAHA T-MAX

SUZUKI RMZ250/450

KAWASAKI KXF250/450/NewZX10R

HONDA / SUZUKI / KSAWAKI のモトクロッサーに関してはモトクロス

ユースであればマイクロテックでは専用のプラグアンドプレーのバッテリーレス

対応のECUがあります。(M222-->CRF用、M206-->RMZ/KXF用)

しかしながらモタード用途であればM232Rの方がいろいろな路面に対応が可能

でありセッティングの自由度が大きく広がります。

例えばターマックとグラベルが混在するコースでは全く異なるセッティングが可能

である。トラクションコントロールやA/Fフィードバックに関しても全く異なるターゲ

ットを設定できる。これはあまり知られていない話であるが、オフロードの世界では

海外メーカーに関してはECUの制御内容はワークスECUとキットECUでは大きく

異なることが知られています。このことを考えれば国内に関しても同様ではないだ

ろうか。国内にはモタードに関してはワークスチームはないかもしれないがトップ

クラスになればなるほどECUの能力差が出るはずである。

国内ではまだECUに細かな仕事させることによるアドバンテージを得ようとする動き

がないことは少しもったいない気がする。例えばトラクションコントロールを例にする

と一般的な見方はモタード=テールスライドでありトラクションコントロールは無関係

と考えている個人やチームが多いがトラクションコントロールとはスライドを止める

機能ではなく、スライドを適正値にコントロールするというものである。

このことを考えればモタード競技でもトップカテゴリーチームはもっと新しいことに

チャレンジしてもおもしろいのではないだろうか。今回のソフトウエアアップデートで

Apriliaのモタード車両にも対応したのでぜひ全日本レベルのモタード車両を作っ

てほしい。興味のあるチームはレイクラフトに連絡願います。国産車/輸入車に関

係なくECU/ロガーに関しての協力ができると思います。

2011年1月17日

New ECU (エンジンブレーキコントロール ターンイン編)

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今回もM232Raycraftのソフトウエアに関して紹介します。前回はエンジンブレ

ーキ(ストレート編)でしたが今回はエンジンブレーキ(ターンイン編)ということで

進めていきたいと思います。

上記のグラフはMOTEGIのあるストレート後の減速を表したものです。車両は

GSXR1000で、スタンダードで採用されているエンジンブレーキコントロール

システムを汎用のECUで制御しています。この場合の制御といってもレースキット

のEM-PROと同じようなロジックで制御しており特別なことは行っていません。

しかしながらエンジンブレーキコントロールと密接な関係をもつセカンダリスロッ

トルのセッティングはEM-PROとは異なるパターンを用いています。

ここで注目したいのはダウンシフト直後から発生しているスキッドがターンイン開始

付近(A付近)まで続いておりそれに伴ってエンジン回転数も袋状の下降上昇のパ

ターンとなっています。ここでのエンジン回転数の急下降と急上昇はどの様な現

象なのでしょうか?

まずエンジン回転数の急下降はリアタイヤのハーフロックが激しい状態であ

ることを意味します。次にエンジン回転数の急上昇はターンイン時に発生するサイド

フォースの上昇によるリアタイヤのグリップ回復とバンクすることによるリアタイヤの

接地外周の減少による効果の複合作用でリヤスピードが見かけ上ではあるが上

昇することにより発生する現象です。(クラッチが滑っていなければエンジン回転

数の上昇とリアスピードの上昇は正比例します。)

ここで大きな問題となるのはターンイン開始直後のエンジン回転数の急上昇と

その区間(B付近)でのスロットル開度とその変化パターンです。具体的には

減速がターンイン手前で終了するようなレーシングビギナーは別として、一般的

なレーシングライダーであればターンイン開始直後から適度な安定したエンジン

ブレーキを必要とし、そのエンジンブレーキはクリップに近づくにつれ自然と減衰

していく様な特性を望むのではないでしょうか?

しかしながら上記グラフではターンイン直後にライダーの意思とは別にスロットル

グリップが全閉であるにもかかわらずスロットルが静的に設定した開度よりも

開いていたり、場合によってはスロットル開度が上昇することもあるという点です。

実際上記のグラフでもB付近のスロットル開度の変化を注意して見て頂きたいの

です。ここではスロットル開度がライダーの意思とは別にターンイン直後に約3%

から5.5%まで変化しています。これではバイクは曲がらなかったり、ハンドルが

切れ込んだりといったネガが短い期間に複合的に発生します。

この現象は傾向的にはGSXRやZXRといったセカンダリースロットル開度とエン

ジンブレーキコントロールをリンクさせている機種に多く見られます。これはエン

ジンブレーキをコントロールするための可変のスロットル全閉位置の制御がエン

ジン回転数の関数になっているからなのです。

簡単に言えばエンジンブレーキコントロールが必要な領域でGSXRやZXRは

「エンジン回転数が高ければスロットルの全閉開度は高く、エンジン回転数が

低ければスロットルの全閉開度は低い」といったようなセットが「定性的」に行わ

れているからです。

もっと簡単に言えばリヤタイヤがハーフロックしてエンジン回転数が低下す

ればスロットル開度がより閉まる傾向になりエンジンブレーキが強くなり、ますます

ハーフロックが悪化し、ターンインでリヤタイヤの接地外周が小さくなりエンジン回

転数が上昇すればスロットル開度がより開く傾向になりエンジンブレーキが弱くなり

ますます走行ラインが外側にシフトするといったデススパイラルに突入していきます。

ここで考え方を変えてエンジンブレーキコントロールのスロットル全閉位置の制御を

エンジン回転数の関数ではなくフロントスピード相当の仮想エンジン回転数の関数

とすれば(上記グラフのFront-Speed RPM)減速中に大きなスキッドが発生し

ても対応可能であり、またターンイン時にリヤスピードがフロントスピードを追い越す

様なエンジン回転数の上昇があっても逆にFront-Speed RPMは通常のエンジ

ン回転数よりも低い値になるため自動的にスロットル全閉位置が低下しエンジンブ

レーキが強化されることになります。

このFront-Speed RPMの概念はM232Rに折り込まれておりまたエンジンブレ

ーキコントロールのタイプもGSXRやZXRのようなステッパーモーターをポジション

フィードバックで活用するタイプもDUCATI-1098R/1198Rのようなオープン

ループでタイプステッパーモータを活用するタイプも両方対応可能となっているので

興味のある個人やチームはぜひ試して欲しいと思います。

またこのM232Rは外部からCAN経由で燃料補正ゲイン、点火オフセット、失火率

を各気筒ごとにコントロール可能であり、また同様にエンジンブレーキ用のステッパ

ーモータのステップ数やセカンダリスロットルの開度をCAN経由でコントロール可能

なのでMoTeCのADLや2DのCALC-MODULEを使用すればオリジナルの色々

なストラトジーの構築が可能です。このECUはプライベーターだけではなくファクト

リーチームの先行テストにも十分活用できるのではないでしょうか。

2011年1月5日

Marelli SRB120

 

srb

このECUはMarelliの中でも最も小さなフルコンです。

しかしながら内容はTC以外の基本機能は上位モデルと同様です。

TCに関してもセットしやすい進角を補正するタイプが装備されています。

ここでSRB120に含まれる基本機能を紹介します。

1)燃料マップ(RPM X TP X 2ポジション)

2)進角マップ(RPM X TP X 2ポジション)

3)基本補正 : 始動補正・水温補正・吸気温補正

大気圧補正・加減速補正

3)シリンダー補正 燃料・点火共にRPMのみ

3)使用可能インジェクタ 2本

4)使用可能イグニッションコイル 2個

5)1chA/F計測用アンプ内蔵

センサーは別売り

使用可能センサ :  NGK LZA03 LZA08

Bosch  LSU4.2 LSU4.0

5)レース用機能

  • 学習機能つき1chA/Fフィードバックコントロール(#1、2シリンダー共通補正)
  • ピットレーンリミッター
  • 簡易式トラクションコントロール
  • シフター
  • Dualマップ
  • CANデータ出力機能あり

6)価格

¥128,000(税別) ---------基本ソフトウエア含む

他に¥39,800(税別)の専用通信ケーブル(CAN)が必要です。

このECUは2気筒までのエンジンに使用可能です。

特にシングルシリンダーエンジンで使用するのであれば本格的なレース用ECUとなります。

また2気筒であっても並列2気筒であれば気筒間の補正はあまり必要ではないので1chA/Fフィードバックコントロールが有効です。

もしMarelliのECUに興味がありMarelliソフトを覚えてみようとするユーザーには最適なECUではないでしょうか?

アプリケーションとしてはミニモト、レース用スクータ(T-Maxなど)、GP-MONOまたGP3用の車両を製作しているチームにもお勧めのECUです。

A/Fアンプやシフターを別に購入することを考えればこの価格はかなりリーズナブルではないでしょうか。

適応エンジンに関しては別途お問い合わせ下さい。

2010年11月13日

New ECU (エンジンブレーキコントロール ストレート編)

今回はM232Raycraftのソフトウエアに関して紹介します。

まずM232Raycraftのソフトウエアはエンジンブレーキコントロールに特徴があります。その特徴とはサーキット走行時の減速時に発生しやすいリアタイヤのハーフロック(スキッド)レベルを自動的に感知してバイパスエアバルブの開度やスロットルバルブの開度を自動的に増やしエンジンブレーキの強さを適正化する機能を備えている点です。

ところで全日本レベルのライダーがコーナー進入時にどのぐらいリアタイヤがスキッドしているかご存知ですか?その値はタイヤや路面や車両のセットアップの状況および乗り方にもよりますが前後車輪の車速差が最大で30~40Km/hにも達するケースもあります。

skid

このグラフは鈴鹿のシケイン進入時のグラフですが、赤が前輪車速で黄が後輪車速です。また緑がエンジン回転数で白がスキッドゼロ時の仮想エンジン回転数です。この時の赤と黄の最大差は約25Km/hでありその付近ではエンジンブレーキが強すぎて減速のトラクションが極端にない状況になっていることを示しています。

こんな状況を多くのライダーは「エンブレが効かないから止まれない」と理解している場合が多く、さらにアイドル回転数を下げて進入時にテールスライドを誘発している人たちも全日本レベルのライダーでも大勢いるのです。しかしながらこの原因は車両側の問題も大きいのです。

この車両側の問題とはレースベース車とはいえ現状は効果的なエンジンブレーキコントロールデバイスを装備していたとしてもKIT-ECUがエンジンブレーキコントロールの機能を持たなかったり、KIT-ECUがエンジンブレーキコントロールを行っているとしてもセッティングが効果的でなかったり一般ユーザーが設定を変更出来ない場合が多いからです。

ここで話をもとに戻しグラフを見てみるとスキッドが多い場合はエンジン回転数も当然のことながら低下します。エンジンブレーキを緩和するためのバイパスエア量はどの様なデバイスタイプであっても、ギアによってバイパスエアの量が変わったり、バイパスエア量の特性が非直線であったり、低回転域で一定になったりしますがエンジン回転数が高ければ多く低ければ少ないと言った定性的な関係は変わりません。

この定性的なルールから言えばスキッド発生によって低下したエンジン回転数は単にエンジン回転数低下ではなく、予定されているバイパスエア量を減少させ、さらにスキッドを誘発させその誘発レベルは初期のスキッドが多ければ多いほど高くなります。いわゆるデススパイラルスキッドです。

そこでスキッド発生時のエンジン回転数低下とバイパスエア量の低下の関係をキャンセルしたのがM232Raycraftのスキッド感応型のエンジンブレーキコントロールです。このシステムはエンジンブレーキコントロールのバイパスエア量決定の関数をエンジン回転数からスキッドゼロの場合の仮想エンジン回転数に変更したものです。このシステムにより減速時のスキッドレベルは低減しスキッドレベル変化率も低下します。

具体的なメリットとしては「今までより短時間で安全に減速が完了する」ためのセッティングの自由度が大幅に広がる点です。今回はターンイン前までのエンジンブレーキに関するメリットを紹介しましたが次回はこのシステムのターンイン中のメリットを紹介します。

2010年11月11日

New ECU

 

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2010年のレースシーズンも終わり、ちょっとだけ気分的に余裕が出来たのでこのシーズンオフにリリースする新しいレース用ECUについて紹介したいと思います。

このレース用ECUは1/2/4気筒に対応しています。このECUは2気筒エンジンをデュアルインジェクタ仕様で点火/燃料噴射共にシーケンシャルコントロールする

モデルがベースとなっております。このECUの最大の特徴は以下に説明する「実際のレースで本当に必要な機能」が織り込まれている点にあります。

では「実際のレースで本当に必要な機能」とは何でしょうか?いろいろな考え方はありますがRaycraftでは以下の様に考えます。

耐久レースでの必須機能

1)燃料消費量がインジェクタONタイムからリアルタイムで計算可能であり計算結果をリアルタイムでCAN出力/デジタル出力できること —–燃費管理

2)燃料カットの作動条件を気筒ごとに設定できること —-低燃費化

3)燃料・点火マップ(ベース、気筒補正、ギア補正、加減速補正)が詳細に設定できること(オープンループでの適正化) —-走行性能の安定化

3)エンジン始動性を各車両に合わせて最適化できること —-スタート時の安全性

スプリントレースでの必須機能

1)スロットル開度20%以降の燃料調整はA/Fフィードバック機能を活用できること —-セッティングに要す時間の短縮化

2)コースに合わせたエンジンブレーキのセッティングがギアごと詳細に設定できること —- 減速性能の向上

3)シフトチェンジ時のホイルスピンを最小限にするシフトター制御 —- 加速性能の向上

4)本質的なタイムアップに寄与するトルクリダクション制御 —- 実質的に有効なトラクションコントロール

耐久レース・スプリントレース共通の必須機能

1)CANによる各データの出力 —- メーターおよびデータロガー用

2)セッティングファイルの高速データ転送(PC< –>ECU CAN接続またはTCP-IP接続)—- セッション中のセット変更時の所要時間短縮

3)セッティング操作の容易性 —- セッション中のセット変更時の所要時間短縮/誤セッティングファイルの転送防止

以上の機能を現在世の中に出回っている汎用ECUでクリアしているものは非常に少ない。私が今まで経験したECUの中でもセッティング操作の容易性を除けばマ

グネッティマレリのMarvel4がこれらの要件を満たすためのセッティング自由度を一番持っているように感じた。ただこのMarvel4は非常に高価であり各ストラトジィの

設定項目も非常に多く一般的な汎用ECUとは全く異なるレース用ECUである。しかしながらハードウエアの耐久性やソフトウエアの自由度を考えた場合、値段以上の

性能を発揮することも事実である。とは言っても金銭的な負担を考えた場合に多くのチームがMarvel4を採用出来ないのも事実である。

そこでRaycraftはレースに必要な機能を持ったもっと手軽に使えるレース用ECUを作ろうと考えました。そしてその構想はマイクロテックM232Rというレイクラフトオリ

ジナルのECUになりました。詳細な仕様とソフトウエアの説明は次回に!!