Raycraft racing service

2012年9月30日

天高く、M232‐GP3快走@岡山 <テスト編>

まだまだ暑い日が続いてはいますが、空の高さにちょっと秋の気配を感じられるようになってきました。

晴天に恵まれた岡山国際サーキットテスト

先週はここ岡山国際サーキットで全日本ロードレースの合同テストが3日間にわたり行われました。

3日間ともすばらしい天気に恵まれ、危うく駄目押しのうっかり日焼けをしてしまうところでした。

つまらない前置きはこのぐらいにして、今回のテーマはマイクロテックのECU M232‐GP3!満を持しての登場です。

dscf0003

全日本ロードレースで、GP125に替わり今シーズンより本格的に始まった新カテゴリーGP3は、motoGPのFIM moto3に準じつつ、MFJ独自のレギュレーションも盛り込んだ、4サイクル、単気筒250ccのレーサーのカテゴリーです。

車両は基本的に自由ですが、ECUと燃料ポンプのみMFJで公認された部品を使わなければならないレギュレーションです。 車両は自由といっても現実的にはほとんどのエントラントがホンダのNSF250Rを使っているというのが実状です。

ECUは現在3部品が公認を受けています。 その3つとは、ホンダ純正のケーヒンECU、キャブレターメーカーとしても有名なミクニのECU、そしてレイクラフトのマイクロテック M232-GP3です!

今回、岡山の合同テストで、このM232-GP3を、チームNOBBYのご協力を得てゼッケン4の山本剛大選手にテストしてもらいました。

山本剛大選手1

ここで、M232-GP3についてご紹介しましょう。

M232-GP3は、これまでこのコラムで何度かご紹介してきたマイクロテックのECU M232Rを母体とする派生モデルで、M232Rの基本機能を踏襲しながら、GP3カテゴリーに要求される性能を拡充した機種で、今年4月27日に正式にMFJの公認部品になりました。

GP3というモデル名を冠しているのでGP3車両専用モデルかと思われるかもしれませんが、実は単気筒インジェクションモデルであれば排気量を問わずどんな車両にでも対応できるスグレモノで、モタードのハスクバーナSMR449に搭載し、全日本moto1オールスターズのYassyこと松本康選手が今シーズン好成績をあげたことは以前こちらのコラムでも紹介したのでご記憶の方もおられるかもしれません。

M232-GP3の主な特徴は3つあります。

1. きめ細かなエンジンブレーキコントロールが出来ること。

2. 学習機能の付いたA/Fフィードバック制御があること。

3. エンジンコントロールの制御を行うのに、別にセンサー類を追加することなくベースの車両についているセンサー類を使って制御が出来る点こと。 また、ステッパーモーターも車両についている純正部品を制御することが出来ます。

以上の3つの特徴についてのさらに突っ込んだ話しは次の<スペック編>で詳し~くご紹介します。

ECUの仕様の話しにそれてしまいましたが、いよいよテスト走行の話しに戻ります。

3日間のテストの初日は、ECUの取り付けです。 あらかじめチームNOBBYのチーフ中山氏にフロントカウルのステイの加工をお願いし、ECUを取り付けできるように準備しておいて頂きました。

M232-GP3マウント1

M232-GP3マウント2

走行は夕方1本だったので、まずECUの作動確認とベースマップの確認を行いました。

データを確認するシバ主任技師

ここで、ライダーからエンジンのパワー感のコメントやエンブレのフィーリングなどを聞きセッティング。

2日目のテストでこのセットを試してもらい、エンプレのフィーリングなどをさらに微調整しセットを進めました。

ライダーとデータを確認する

山本剛大選手のコメントは若手ライダーながらなかなか明解です。 セット換えした後のフィーリングも的確にフィードバックしてもらえました。

ライダーのコメントを聞く主任技師。後ろはチーフの中山氏と森俊也ライダー

3日目はこれまで進めてきたセッティングをもとにタイムアタック。 3日間のテスト走行の中でGP3カテゴリーの2番手のタイムとなり自己ベストも更新しました。

このことはM232-GP3がSTD ECUと比較して大きなパフォーマンス不足はないと考えてもよいのではと思っています。 こんなことを言うと少し奇異に感じられる方もいるのではないかと思いますが、STD ECUに対しての基本的なレイクラフトの考えは、「メーカーのECUは優れている。」ということです。

なぜなら、STD ECUは多くのエンジニアが多くの工数をかけて最終GOサインを出したものだからです。しかし、コスト制約やターゲットユーザーを考えた場合STD ECUの限界という点も否定できません。

一方、レイクラフトで扱う汎用ECUの方がコストも、導入の手間もかかりますが、それを超えるだけのパフォーマンスや満足が得られる可能性も持っていて、ユーザーの皆さんに喜んでいただけるものと確信しています。そのためには少なくても導入時点でSTD ECUと同等のレーシングパフォーマンスが無ければ比較対照のスタート地点に並ぶことは出来ないと考えています。

コースイン

この3日間で、M232-GP3の貴重なテストを行うことが出来ました。 ご協力いただいたチームNOBBYに心より感謝いたします。

そして、NSF250Rの現状のECUセッティングに満足出来ていないライダーの皆様、もっと細かく深くセッティングできればと思っていらっしゃるチームの皆様、この機会にぜひレイクラフトのお勧めするマイクロテックM232-GP3をご検討いただければと思います。

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2012年9月18日

モタードmoto1 九州大荒ればい!

やってまいりました九州は熊本。

といっても、実はレイクラフト、先週の全日本ロードレース オートポリス大会からの居残りですっかり九州人になっとっとよ。

モタードmoto1も回を重ねてはや第7戦、ところはHSR九州。 あのKING佐合選手のホームコースでもあります。

レイクラフトはHSR九州は初めてばい。 興味深々でナビに連れられゲートイン。 思いっきり本田技研㈱熊本製作所内です。 そして何と、道路を挟んで向かい側にはRSC高武のショップがあるではないですか!こんなまん前に!と二度ビックリ。

いや~すばらしいコースです。 さすがです。

HSR九州1

そして、メインスタンドの前に、これでもかとその存在感を示すダートセクション。 今回のモタードコースは一周約1.4Km強と他のコースに比べても長いのですが、それにしてもこのダートセクションは相当長いと思われます。(後でロガーで見たら、第一、第二トータルで約300mほどありました。)

HSR九州2

コントロールライン直後の第一ダートはロードコースから左に直角に入り、右カーブ。

Dirt1

その後左に折れて轍の深い短い直線の後大きなテーブルトップ。

Dirt2

この後S字のようなコースを抜けて一旦ロードに戻り、

Dirt4

すぐに第二ダート。ここはカントの付いた、轍の深い右カーブ。

かなり手強そうです。 ダートの質も他とはちょっと違って見えます。(あくまでも素人目ですが・・・)

砂というよりは粘度のある”土”といった感じの色ですが、ベテラン三苫ライダーによると、火山灰の混じった独特のテクスチャらしく、湿ってくると思いのほかツルッと滑りやすい難しいダートなのだそうです。

9月15日(土)の練習日は好天に恵まれました。 爽やかな青空の下、広々としたパドックに色とりどりのテントが映えます。

Paddock1

PROクラスは、10分間の練習走行が午前中3本、午後1本のスケジュールで行われました。

FP1

好天の元ながら、前夜の雨でやや湿り気を含んだダートは、moto2、moto1オープンのライダーだけでなく、PROクラスのライダーにも牙を剥きました。 不意に襲い掛かるスリップや、ダートにタイヤを取られバランスを崩したライダーたちが次々に転倒、コースアウト。 明日のレースに不穏な展開を予想させる練習走行となりました。

FP2

明けて16日(日)は朝からどんよりした曇り空。

Cloudy HSR

いつ雨が降ってもおかしくない・・と思っていたら本当に朝フリー前からポツポツ降り出しあっという間に路面はウェットに。 それでもダートのキャンセルは無く、予定通りのコースで走行が開始されました。

Rainy HSR

思ったとおり、ダートコースは大渋滞。 昨日以上に転倒、コースアウトが続出。

大渋滞

そんなコンディションの中、ダートコースを丁寧にこなし、得意のロードコースを巧みに乗りこなしたミトマックスがPROクラス予選でトップタイムをたたき出し、2位の佐合選手に1.2秒のタイム差をつけて、今シーズン初のポールポジションを獲得しました。2位は佐合選手、3位IKKI選手と続きました。

予選結果

予選の余韻覚めやらぬ内にいよいよPROクラスRACE1。 天候は相変わらず雨が降ったり止んだりの不安定な状況。 ダートのコンディションもさらに悪化していましたが、主催者はあくまでダートはキャンセルせず、対応措置として第一ダートの外側の草むらまでコース幅を広げ、このラインの走行も可としました。 この対処が吉と出るか凶と出るか・・・

草むらコース

RACE‐1スタート。ポールポジションのミトマックスはトップで第一ダートに進入したものの、草むらラインを選んだミトマックスに対し、とっさにダートラインを選んだIKKIがミトマックスを交わしてトップに立ちます。 この後、後半のダートでミトマックスが痛恨の転倒、再始動する間にポジションは最下位に。 トップグループは、IKKI,佐合が他を離しにかかります。 中盤、佐合がIKKIを抜いてトップに立ちますが、最終ラップのダートセクションで、佐合のインをさしたIKKIが前に出てそのままトップを守り見事今季初優勝をゲットしました。

RACE 1 スタート

IKKI優勝

2位に佐合選手、3位にはCG.Phantomの五十住選手。 ミトマックスはレース中のファステストラップを刻んで追い上げましたが惜しくも10位という結果になりました。

今回のRACE 1での森田IKKI選手の初優勝でマイクロテックECU M206のモタードmoto1での初勝利となりレイクラフトにとっても大変うれしい結果となりました。

午後のRACE‐2までの間、天候は刻一刻と変わりました。雨がザーッと降ったかと思うと、チラッと日が差し強風が吹いて路面が乾きだし、その後また霧雨が続いたりと、なんとも微妙なコンディション。 突然の突風でテントが飛ばされるハプニングもありました。

突風でテント飛ぶ

RACE-2の路面は、RACE-1に比べるとロードセクションはややウェット、ダートセクションはやや乾き気味というタイヤチョイスに迷う状況。 スタートでは佐合選手がトップでダートに進入。IKKIが2番手、ミトマックス5番手。その後、ミトマックスはロードセクションで2台をかわし2周目には3番手に浮上。

RACE 2 スタート

この後、佐合選手のジャンプスタートが認定され、60秒のピットストップ・ペナルティが課されます。 これで、ポジションはトップIKKI,2番手ミトマックスとなります。

2番手につけるIKKI

7周目にはミトマックスがIKKIをかわし一時はトップに浮上しました。

トップ浮上のミトマックス

しかし、続くダートセクションでIKKIに前に出られ、さらにピットストップペナルティを受けた佐合が猛然と追い上げてきて2番手まで浮上。 最後はIKKIをもかわしてなんとトップチェッカー。 恐るべしKING佐合!

レース後のパルクフェルメ

RACE2 表彰式

こうして、大荒れの天候の中、レースも壮絶なバトルの展開となり九州ラウンドが終了しました。

今回のレースでは、マイクロテックECU M206の初ポールポジション獲得、そしてRACE1での初勝利、RACE2では、2位、3位表彰台獲得と、大変うれしい結果となりました。

ちなみに、Yassyこと松本康選手のハスクバーナSMR449にも、マイクロテックのECU M232GP3を搭載していることは以前のコラムでご紹介しましたが、松本選手は7月29日に開催されたmoto1オールスターズ第5戦TSタカタのRACE1で2位、RACE2では今季初勝利を飾っており、ここでもマイクロテックECU M232GP3のモタードレース初勝利という結果を残していただきました。

松本選手は、この後、オートレース選手養成所第32期選手候補生の試験に合格し、今年の10月より晴れてオートレーサーへの道を歩まれることになりました。 おめでとうございます。 新しい世界にチャレンジされる松本選手の今後のご健闘を心よりお祈り申し上げます。

2012年9月14日

2012 鈴鹿8耐レビュー その3 <8回ピット作戦のリスク>

Suzuka8H_2012

鈴鹿の8耐といえば、7回ピットの8スティント走行がこれまでの定石であった。

2002年にホンダが前人未到の6回ピット作戦を成功させて優勝したことを除いては、7回ピット作戦が当たり前、8回ピットをやったら上位入賞はないというのが定説と思っていた。

ところが2012年の8耐はその定説が大きく揺らいだ。というか、これまでの常識が崩れ大きく転換したターニングポイントの年であったと思う。

確かに事前テストの頃から、「どうもチームOOは8回ピット作戦らしい」とか、「△△のチームは7回ピット作戦はあきらめたらしい・・・」などという噂を耳にし、私はまさか~???と半信半疑だった。

ところがいざ蓋を開けてみると、有力チームのほとんどが8回ピット作戦を行っていたのを見て私はまるで狐につままれたような気がした。 結局、レース中上位に絡んだチームの中で7回ピット作戦を取ったのは、優勝したTSR Hondaと残念ながらリタイアに終わったものの最後まで壮絶な3位争いを展開したEVAトリックスターだけだったのだ。

8回ピット作戦をやらなければならない主な理由はおそらく燃費が成り立たないからだ。

みんないつから燃料を絞ることをやめてしまったのだろう。

燃料を絞らずに8回ピットインをしつつ、それ相応の想定周回数を設定すると、どこにしわ寄せが来るか?

それは、ライダーに速いアベレージタイムのキープを強いることになる。

確かに、YARTもHARCもヨシムラもSERTも驚異的なラップタイムを叩き出している。 しかし残念ながらそのどれもが理由は様々だが悲劇に見舞われている。 その原因が、常に速いアベレージタイムをキープしなければならなかったからだと理由付けてしまうのは早計かもしれないが、ライダーにハードプッシュを強いていたのは間違いないのではないだろうか。

話しはそれるが、今年の自動車のル・マン24時間レースで似たような展開があったのをご存知の方もおられるかもしれない。

優勝候補筆頭のアウディ勢に対し、トヨタ勢も善戦していた。 トヨタの作戦はアウディよりもピットインの回数を増やす代わりにアベレージタイムを上げる作戦。 アウディとトップ争いを展開しスタートから5時間ほど経過した頃、ついにトヨタ車の一台がアウディを抜いて1位に浮上、しかしその直後別のトヨタ車が周回遅れの車両に激突。この事故処理の間のセーフティーカー先導中、ピット作業でトヨタはアウディに逆転され、セーフティカーが抜けた後のレース再開後まもなく、追い上げを図っていたこのトヨタ車も日産の車両と衝突してリタイアという結果になった。

耐久レースは過酷だ。 ライダーの消耗は想像を絶する。 そんな中で速いラップタイムを刻み続けて走行できるライダーは本当にすばらしい。 しかし、ライダーだけにそのような過酷なレースを強いていて良いのだろうか?

耐久レースはチームワークの戦いだ。 1秒でも早くピット作業を行えるように備えるピットクルー、ライダーの体調管理をするスポーツドクターやヘルパー、レース全体を把握し指揮するチーム監督、では燃費の手立てをするエンジニアはどこに?

燃費が成り立たないから8回ピット作戦で。 その代わりライダーの皆さんはハイペースを確実にキープしてくださいね。ではまずいでしょう。 もしそれが本当なら、批判を恐れず言わせてもらえばそれはエンジニアの怠慢だと思う。

こう考えてくると、一見楽そうに見える8回ピット作戦は実は大変リスクの高い作戦と言わざるを得ない。

2012年9月13日

2012 鈴鹿8耐レビュー その2 <出口の28周>

 Suzuka8H_2012

出口選手とは2009年のPLOTでの全日本参戦以来、今年で4年目のお付き合いとなります。

そして、出口選手の耐久レースでの課題はなんと言っても燃費。

この話しをすると出口選手はちょっと、いや、かなり不機嫌になってしまうのですが、耐久レースではこの課題は避けては通れない重要事項です。

私たちレイクラフトも、エンジンのマネージメントや燃費の管理を行っている以上、この点について何とか出口選手の燃費を向上させることが出来ないかと毎年いろいろなアドバイスや、燃料設定のアイディアを練ってきました。

ただ、これは本人の名誉のためにもあらかじめ言っておいたほうが良いと思うのですが、決して出口選手の燃費が極端に悪いわけではないのです。ただ、同じチームで走る選手と比べるといつもちょっとだけ燃費が悪いというだけなのです。

昨年の8耐コラムで「芹沢の28周」と題して、芹沢選手の燃費の良さとその秘密を紹介しました。

(そのコラムはこちらです。≫ http://www.raycraft.jp/column/?p=212 )

燃費の良し悪しはその走り方に大きく依存します。 そして、その走りのスタイルを燃費向上のために変えることはライダーにとっては非常に難しいことです。なぜなら、スロットルの開け方、戻し方、ブレーキの掛け方、ギア使い、車体の動かし方、そのどれもがすべて速く走るための一連の流れになっていて、その一部分だけを別のスタイルにするということはタイムを犠牲にするだけでなく、走りのリズムや感覚を鈍らせてしまうリスクも含んでいるからです。

その一方で、例えば、ダンロップコーナーと130Rの使用ギアを一速高くする、シフトダウンのときのスロットルのあおりを極力少なくするなどの細かいところを積み重ねてゆくと、これだけで数10ccの燃料消費量削減につながってくるというのも事実です。

出口選手はこの”走り方を変える”という作業に果敢に挑戦し燃費を改善する一方、私たちもエンジンマネージメントで燃費の向上を図りました。

Deguchi

今シーズンの燃費改善の秘策は、前回のコラムで前振りした「カットオフ」です。

カットオフとは、の話しをする前に、まず燃費を良くするために何をやるべきか?燃料を薄くする。それは当然ですが、ではどの部分を薄くすれば良いのか? 全開域? 加速の過渡? いいえ、答えは減速区間です。

意外に思われた方は、2年前の8耐コラムで紹介した燃料を絞る話しをぜひご一読ください。

そのコラムは▼こちらです。

http://www.raycraft.jp/column/index.php?s=%BB%F6%C1%B0%A5%C6%A5%B9%A5%C8%CA%D4

減速区間、つまり、スロットルを戻してから次に開けるまでの区間で、いかに燃料を使わないようにするか?

一番簡単なのは燃料を止めて(吹かないようにする)燃えないようにする。これが”フルカット”です。 しかしフルカットには副作用もあります。 それはカットからの復帰時にショックが大きいということです。

カットで燃料を削りたい、でも復帰時にはスムーズな加速を再開したい。 この二つのわがままをかなえるには、カットに様々なバリエーションを持たせるしかありません。

そこで、今年、マイクロテックのM232Rに追加したロジックは、次のようなカットのバリエーションです。

1.気筒別/ギア段別にカットする/しないを選べる。

2.さらに1の条件設定の中で、カットするを選ぶと、次にその条件下で各回転数ごとにカットのスロットル開度の閾値と、そのときの燃料の増減量、さらには点火時期のオフセットも任意に設定できる。

3.また、このカットオフのロジックは、カットからの復帰時、急激にベースマップに戻るのではなく、ベースマップまで徐々に復帰させる機能があり、その復帰までの時間を任意に設定することが出来る。

例を挙げると、1気筒と3気筒の3速以下をカットするに設定し、エンジン回転が5000rpm以上で、開度が2%以下の時に燃料をベースマップの50%にし、ベースマップまでの復帰の時間は50msec。 といったような具合です。 実際にはエンジン回転とスロットル開度の設定、燃料の減らし方,復帰時間はさらに細かく設定しました。

この話しを読んで、「その減速のカットのときのエンプレの設定との絡みはどうなってるの?」と疑問をもたれたアナタ! すごいです。特にGSXR1000とZX10Rはエンジンブレーキコントロールをバリアブルフルクローズタイプにするとカットオフとエンジンブレーキコントロールの折り合いが一般的な汎用ECUではつかなくなります。 そこはここで説明するにはあまりに難しいので、別の機会に主任技師に説明してもらいます。

このカットオフにより、1スティントで27周を確実に走れるように燃料セットし、さらにもうひとつの武器を投入しました。 それは前回のコラムでご紹介した2DのMidi Dashです。

MIDI Dash

ディスプレイの表示を解説すると、上段左がラップタイム。 下段左がTC(トラクションコントロール)のレベル表示、下段右が選択しているマップの表示、そして中段右に表示しているのが燃料消費量です。

インジェクタの容量を基準にECUが算出している燃料消費量の値をここに表示し、消費量が22リッターを超えると、アラームの赤ランプが点滅してライダーに知らせるという設定にしました。

これで、ライダーは1タンク24リッターに対し今どのくらい燃料を消費しているのかを見て、この数値からあと1周いけるかどうかの判断をすることができますし、逆に想定より燃費が悪い場合でもガス欠という最悪の事態を回避することが出来ます。

ライダーの走り方、燃料のカットオフのロジック、そしてダッシュディスプレイの燃料消費量表示、この3段構えで、燃費に対する不安感を大幅に払拭することが出来ました。

いよいよ8耐レース本番、スタートライダーの芹沢選手は想定の25周にライダー判断で一周プラスの26周、続く第2スティントの出口選手も燃費を考えた走行に徹しディスプレイの燃料消費量の数値を見て自己判断し、なんと想定の27周にプラス1周の28周を走行。 燃費はなんと7.1。 ピットのスタッフもびっくりの好燃費となりました。

出口修、もう誰にも燃費が悪いとは言わせない!

2012年9月12日

2012 鈴鹿8耐レビュー その1 <戦闘準備>

Suzuka8H_2012

最近コラム読者の方にお会いするたび、コラムのアップが滞っているとのご指摘を受け平謝りの日々が続いておりました。

ご無沙汰しておりました。ネコラムです。

前回アップからすでに3ヶ月が経過し、隔月刊どころか季刊になってしまっていますが、今回もめげずにアップします。

御題はすでに賞味期限ギリギリの鈴鹿8耐ネタです。

まだまだ残暑厳しい折ですが、秋の夜長の夜更かしに、レイクラフトの夏の思い出にお付き合いください。

レイクラフトでは2012年の鈴鹿8耐も、昨年同様EVAトリックスターレーシングチームのエンジンマネージメントを請け負いました。2年目のKawasaki ZX-10Rですので、電装品もさらに戦闘力をアップ!

ECUは昨年に引き続き、マイクロテック製のM232R。 これに、新たにいくつかのロジックを追加しました。

dscf0003.JPG

その中でも注目のロジックは、”カットオフ”。「 これに尽きます。」 (主任技師 談)

このロジックは、耐久レースの重要なポイントとなる燃費向上に大いに貢献するロジックで、その内容は次のコラムで詳しくご説明します。

データロガーは2D製ですが、今年は昨年よりグレードアップして4CANのメモリーモジュール。これの最大の特徴は通信がTCP/IPであること。ダウンロードはUSBの約3倍の速さです。

CANのチャンネル数は160チャンネル、メモリは2GB、Deutschのオートスポーツコネクタはリアルレーシングの定番。かっちりしたつくりは2Dならではのハイエンドモデルです。

4CAN memory module

さらに新規投入は2DのMidi Dash(ミディダッシュ)。Moto2でも使用されている2D最新のディスプレイです。

MIDI Dash

これは、従来のMini Dashに比べて液晶画面の面積が約1.5倍、表示できる項目が増えてかなりの武器に!この武器がどれほど役に立ったかはあとで詳しくご紹介します。

続いては以前にもご紹介したことのあるハンドルスイッチ。

TC SW

ファミコンSW

ゲーム機のボタンのように見えるのでレイクラフトでは通称「ファミコン」と読んでいるスイッチです。 TC(トラクションコントロール)のアップダウン、マップの切り替え、ピットロードリミッターのON/OFF、エンジンのキルスイッチ、燃料カウンターのリセットと、このスイッチセットでこれだけの仕事をこなしてくれる優れものです。

そして、シフター。 よりよいシフトデバイスを求め続けるわが主任技師が今年ロックオンしたシフターは、フランス TEXYS社製のTexense モータースポーツシフター。

TEXES shifter

TEXYSシフター

荷重セットは決して簡単ではありませんが、一度適正な荷重をセットすれば、その信頼性、作動性、確実性は他の追従を許さない・・・とちょっと大げさすぎましたが、かなり良かよ~!(なぜか九州弁、実は九州にて執筆中・・)

これらの武器を引っさげて、モタード@伊那が終わった直後から、レイクラフトは8耐モードに突入したのです。

そして6月7日の鈴鹿公開テストを皮切りに、6月最終週にも鈴鹿テスト、7月は毎週テストと8耐に向けて怒涛の追い込みが始まったのでした。

この後もレビューは続きます。 お楽しみに!